■ブウとの友情がアツかった『ドラゴンボール』ミスター・サタン
ホラ吹きの代表格といっていいのが、鳥山明さんによる『ドラゴンボール』(集英社)に登場するミスター・サタンだろう。
サタンは人造人間・セル編で初登場すると、地球を救うヒーローとしてセルに戦いを挑んだ。その実力はお世辞にも強いとはいえず、むしろ雑魚キャラである。そんなサタンはあっさりと殺されるのかと思いきや、セルの気まぐれによって命拾いする結果となった。しかし悟飯とセルの戦いで危険を冒したナイスアシストをしており、単なるビッグマウスキャラでないのはこの時点でうかがえた。
その後登場した魔人ブウ編でも、サタンは意外な活躍を見せ続ける。彼は誰も従わせられなかったブウの心を、あっさりと開いてしまったのだ。それは、彼が他の者たちとちがってブウと「友」になろうとしたからこそだろう。
ブウとサタンがお互いに心を通い合わせる場面は、見ていてもかなりほっこりさせられ、いつまでもこの関係が続けばいいのに……とすら思ってしまった。
しかし、そんな関係を崩したのが騒動に便乗して「人間狩り」をしていた男たち。彼らはなんと、ブウがサタンと同じように大切にしていた犬・ベエを遊び半分で撃ち抜いたのだ。
これにサタンは激怒! 悪党を素手でボコボコにやっつけていた。その真剣な表情からは、これまでのおちゃらけた印象はまるで感じられなかった。
わざわざサタンが手を出さずとも、ブウなら簡単にその男たちを殺すことすらできたはずだ。しかし、このときすでに生き物を大切にしようとしていたブウにそんなことをさせたくなかったから、サタンは真っ先に動いたのではないだろうか。
サタンがいかにブウを大事にしているのかが伝わり、ふたりの友情が感じられる素晴らしいシーンだった。
ホラ吹きキャラは、最初はあまり周囲から期待されていないだけに活躍した時の衝撃が大きい。さらに、活躍時には彼らが偽りのない本当の姿をさらけ出してみせるからこそグッとくるのだろう。