漫画やアニメに登場するキャラには、個性を出すためにいろんな性格がある。中でも少しイラッとしてしまうのが「ビッグマウスキャラ」だ。
自分は周りの人間よりも優れていて、いずれはヒーローのような存在になる! 人目もはばからず大言壮語を吐いて、周りのキャラはもちろん、読者にも呆れられる結果に……。
しかし、そんなキャラが他人のために行動をした時、なぜか心を打たれてしまう。普段見せない姿とのギャップがあるからだろう。しかもかなり重要な場面でそれをやってくるのがニクい。
そこで今回は、ホラ吹きキャラがここ一番という時に見せた心に響く奮闘シーンを紹介したい。
■甲子園での活躍に震えた!『H2』木根竜太郎
まず紹介したいのが、あだち充さんによる『H2』(小学館)に登場する木根竜太郎だ。木根は常に自分をよく見せたいという性格のため、大口ばかりをたたいている。
それが当たり前のようになっていたから、周りの人間も適当に受け流すようになってしまった。しかし、野球の才能に関しては誰もが一目置く存在でもある。才能が目立たないのは、木根があまりにもふざけているからだろう。損な役回りだ。
しかし、彼はおちゃらけた態度の裏側でしっかりと努力もしてきた。そんな努力を監督は見逃さず、甲子園の準々決勝では、エースの比呂を休ませるために投手として登板させることになる。
木根は甲子園という大舞台で、自分が投手として活躍するなど思いもしなかったので、かなりプレッシャーを感じていた。何度も途中で交代されるのでは?と思いながら投げ続けるも監督には交代させる意志がない。
そこには、木根なら最後まで投げ切ることができるという信頼があったからだ。それが木根の力になり、9回まで投手として立ち続ける。そして、最後の打者を見事打ち取ってゲームセットとなった。
このシーンの背景には木根の過去も関係している。木根は小学校の時に自らの目標として、“甲子園に行って三振をいっぱい奪る”とみんなの前で発表した。だが、同級生は木根は口ばかりのヤツといって相手にしない……。
唯一その言葉を信じてくれた祖父は、孫の成長を見守ってはいたが、木根が目標を叶える前に亡くなってしまう。そうしたエピソードもあって、木根が最後までマウンドに立って勝利を勝ち取った瞬間には震えがきた。
■まさかの活躍に涙!『ダイの大冒険』ニセ勇者一行
堀井雄二さん、原作:三条陸さん、作画:稲田浩司さんによる『DRAGON QUEST ーダイの大冒険ー』(集英社)にも、ホラ吹きキャラによる大活躍がある。それがニセ勇者一行の世界を救う奮闘だ。
ニセ勇者一行は序盤に敵キャラとしてダイの前に現れると、あっさりと倒されてしまい小悪党のようにしか見えなかった。しかし、大魔王バーンが地上を消滅させるため6本の柱を世界中に投下した際、大活躍を見せる。
この6本の柱には黒の核晶(コア)と呼ばれる爆弾が埋め込まれていて、ヒャド系(氷系)の魔法で活動を停止させるしかなかった。どれかひとつでも処理をし損なうと全てが誘爆する仕組みで、各地でその対応に追われることになる。だが、北の大地には誰もおらず処理できる人間がいない。
このままでは世界は終わる……。そう思った時に、ニセ勇者一行がダイの声を聞いて現れた。その時の彼らの姿はこれまでのような情けない姿ではない。世界を救うという意思や勇気が伝わり、堂々としていてカッコ良かった。「こんな 北の果てにもちゃんと勇者サマはいるから安心しろいっ!!」「…ニセ者だけどなあっ!!!」のセリフも泣かせる。
そんなニセ勇者一行とマトリフの協力によって世界は救われることになる。これまで偽物でしかなかった勇者たちが、ついに本物の勇者になったのだ。まさかこんな展開が待っているとは……誰もが予想できなかったに違いない。それまでの描写がすべてこのための伏線だったように思えてしまった。