２０２５年１月４日、１７年ぶりとなる松平健さん主演の時代劇『新・暴れん坊将軍』（テレビ朝日系）が放送。平均世帯視聴率は８.３％（ビデオリサーチ調べ、関東地区）を記録した。
三池崇史監督がメガホンを取ったこの痛快時代劇は好評を博したが、昭和から平成初期を思い返すと毎日のようにどこかのテレビ局で「時代劇」が放送されていたのを思い出す。
テレビ朝日系列では『暴れん坊将軍』のほかにも、『遠山の金さん』、そして『三匹が斬る！』といった作品が１９８０年代後半から９０年代を代表する定番の時代劇として知られている。
なかでも『三匹が斬る！』は根強い人気を誇るシリーズで、今もＢＳ朝日の再放送やＣＳの時代劇チャンネルで好調だという。
そこで、萬屋錦之助さん主演の『破れ傘刀舟悪人狩り』で時代劇にハマった筆者が、エンタメの塊だった時代劇の傑作『三匹が斬る！』の底しれぬ魅力について振り返ってみたい。
■今の芸能界をリードする名役者がそろい踏み！
『三匹が斬る！』は、とくに連れ立っているわけでもない３人の浪人たちが、なぜか旅先で鉢合わせし、その腕っぷしの強さと華麗な剣技で悪党を退治する痛快な時代劇。８０年代後半から９０年代序盤にかけて人気に火がつき、当時、最高視聴率２０％超えを何度も記録した大ヒット作品である。
登場する“三匹”とは、どこか高貴なたたずまいの通称「殿様」こと矢坂平四郎（演・高橋英樹さん）、仕官を夢見る「千石」こと久慈慎之介（演・役所広司さん）、インチキくさいが気の良い素浪人で、通称「たこ（蛸）」と呼ばれる燕陣内（演・春風亭小朝さん）の３人。
この３人の主要メンバーは「優、剛、柔」と特徴が明確に分かれ、見た目や性格も三者三様のため、前話を見逃した人や途中視聴の人でもすんなりと作品に入っていけるのがありがたい。
そしてそんな彼らに同行し、絶妙なやり取りで物語を盛り上げるのが、杉田かおるさん演じる“お恵”といった美しい女性たちで、こちらはシリーズごとにキャストが変わった。
現在、高橋さんは役者としてだけでなくＣＭやバラエティ番組でも大活躍。役所さんは日本映画を代表する名優であり、小朝さんは言わずとしれた落語界の大看板だ。各人がそれぞれの分野で大成功をおさめているのはご存知のとおりである。
なお『三匹が斬る！』は、１シーズン２０話前後を毎年のように放送。各シリーズごとに『続・三匹が斬る！』『続続・三匹が斬る！』のようにタイトルが微妙に変わっていき、４作目では『また又・三匹が斬る！』、６作目に至っては『ニュー・三匹が斬る！』と、時代劇なのに横文字が入るなど、何でもありな懐の深さを感じさせられた。
■大人になった今なら納得！ ３人の武器から見える登場人物の奥深さ
近年大きな話題となった、日本刀を擬人化させたソーシャルゲームに『刀剣乱舞』という作品がある。本作は女性人気が高く、かくいう筆者もサービス当初からのヘビーユーザーだ。そのため『三匹が斬る！』の３人が所持する刀や武器にも、それぞれのキャラクター性が込められていたことに、あらためて気づかされる。
殿様の愛刀「堀川国広」は、重要文化財にもなった著名な刀剣を輩出した刀工の作で、劇中では大柄な高橋さんにあわせてか刀身が長い。また、悪を成敗したあとに、刀を拭いた懐紙を舞い散らす派手な演出は、劇中における見せ場のひとつだ。
さらに刀を鞘におさめる際に「チン」と音を鳴らす所作は、同じ高橋さん主演の時代劇『桃太郎侍』を思い出す。殿様は、ほがらかで豪放な反面、実は３人の中で唯一正体不明で、ミステリアスな部分も魅力的だった。
一方、ふだんは商家の用心棒などをして生活する千石は、“兜割り”などでも名高い実戦刀「同田貫」を愛用。薩摩出身の九州男児である千石は、薩摩藩で生まれた古流剣術「示現流」の使い手であり、同田貫も九州肥後国の刀だ。
殿様とは対照的に、成敗後の刀を袴で拭うという仕草は彼の性格を象徴しており、のちに正体が公儀隠密と判明するも、ずさんな報告でお役御免になったりと、彼の武骨さが伝わるエピソードも多い。
飄々として世慣れた雰囲気のたこは、双頭の仕込み槍や劇中で手に入れた短筒（拳銃）など、多彩な道具を使用する柔軟さを見せる。『水戸黄門』の「うっかり八兵衛」と同じように、時代劇において定番の笑いをもたらすムードメーカーだが、大きな相違点は腕っぷしが強いこと。
その正体は、甲賀の流れをくむ忍者の末裔で、なおかつ元京都町奉行というトリッキーな肩書きを持つことが判明して視聴者を驚かせた。
武器や人物設定までしっかり考えられて作られているのが、今となってはよく分かる。
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