■恋をして強くなった姿に痺れた! 『天使なんかじゃない』麻宮裕子

 1991年に『りぼん』(集英社)で連載が開始された『天使なんかじゃない』は、“りぼん黄金期”を支えた作品の1つだ。高校生徒会を舞台に、主人公・冴島翠が恋に友情に奮闘する姿が明るいタッチで描かれており、読むと元気になれる青春物語である。

 本作に登場する麻宮裕子ことマミリンは、生徒会の書記を務める女子生徒だ。美人で成績優秀、髪をおさげにまとめている優等生のマミリンは、天真爛漫な翠とは正反対のキャラクターで、冷めた態度をとることが多い。

 だが、実はマミリンは中学生のころから同じ生徒会のメンバーでもある同級生・瀧川秀一に想いを寄せていた。普段は冷静なマミリンだが、瀧川の前では頬を染めて柔らかい表情になり、恋する乙女の姿になる姿がとても可愛らしい。

 彼女の芯の強さは節々で感じることができるが、とくに印象に残っているシーンがある。物語終盤、長い片想いが実りマミリンは瀧川と付き合うことになるのだが、それまでに瀧川の彼女・原田志乃と彼を取り合うような形になった。

 瀧川とキスをしていたのをほかの生徒に見られてしまい、不本意な噂が広がってしまったマミリン。心配をした翠は思わず泣いてしまうのだが、当のマミリンは「あたしは思ってたより平気だわ」「自分に誠実であれば 胸を張っていられるものなのね」と、凛とした態度で穏やかに微笑んでみせた。

 マミリンのこの時の笑顔は、葛藤を自身の力で乗り越えた清々しさ、そして好きな人と付き合えることになった幸福感などさまざまな感情を感じられるもので、とても美しく綺麗だったことを覚えている。

 彼女は恋をして強くなった女性だ。瀧川を侮辱する志乃に対し、涙を流して食ってかかったこともある。冷静に見えるが実は情に厚く、翠の素直さに憧れる等身大の女の子だった。当時、本作を読んでいて、マミリンのようになれたらと思ったファンは少なくないだろう。

 自身の夢を諦めずにイギリス留学を決めた瞬間もカッコ良く、個人的に“その後”が気になるキャラクターの1人である。さぞかし、いい女になっていることだろう。

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