ドラマチックな展開、キャラクターたちの繊細な心理描写が魅力の矢沢あい氏の漫画作品たち。作中に登場するおしゃれなファッション、センス抜群のインテリアや小物にいたるまで、見どころが満載だ。
そんな矢沢氏の作品には、可愛くもカッコいい魅力的な「いい女」が多く登場する。大人になってあらためて作品を読み返してみると、彼女たちのような「いい女」たちの生きざまが沁みるのだ。そこで今回は矢沢あい作品に登場する「本当にいい女」たちを名シーンや名言とともに振り返っていこう。
■親友にもズバズバと物申すカッコいい女!『NANAーナナー』早乙女淳子
2000年から『Cookie』(集英社)で連載されている『NANAーナナー』。同じ名前を持つ2人の女性が主人公の作品で、2009年から矢沢氏の病気療養のため休載となっているが、いまだに連載再開を望む声が多い未完の名作である。
本作に登場する早乙女淳子は、主人公・小松奈々の高校時代からの親友だ。夢見がちで恋愛体質な奈々を近くで見守り、ときに厳しい言葉で叱ってきた淳子。自分の夢を追いかける筋の通った女性で、サバサバとした物言いもされど周囲の人間に対する気遣いも素晴らしい。
そんな淳子に憧れる女性は当時から多く、コミックスの巻末のおまけページでは『淳子の部屋』という小コーナーがあるほど、本作屈指の人気キャラクターである。
主人公の奈々はいつも淳子の言葉に支えられ、背中を押されてきた。
奈々にとって人生の転機となったのは、やはり妊娠が発覚した時だろう。憧れのスター・一ノ瀬巧(タクミ)と関係を持つも、自身のなかで存在が大きくなっていた寺島伸夫(ノブ)と付き合うことを決めた奈々。しかし、そんなときに妊娠が発覚する。
突然のことで動転する奈々だが、タクミが奈々と子どもの面倒を見ると言ってくれたことで、彼の子どもを産むことを決意する。それでもノブや大崎ナナのことが気がかりで、奈々はメソメソと泣く。
淳子は奈々に対し「それで覚悟決めたら 二度とウジウジ泣かないで」「そんな暗い母親じゃ 子供がかわいそうだよ」と、あえて強めに諭すのだ。
子どもを産み育てるというのは、生半可な覚悟ではできない。淳子自身は子どもはいないが、母親になる大変さをわかっていて、奈々にこれから訪れる困難を見据えていたのだろう。
淳子に背中を押されたことで奈々は妊娠にしっかりと向き合うことができ、そこからは人が変わったように自身の信念を曲げず行動するようになっていく。
大切な友人だからこそ、中途半端な言葉ではなくはっきりと思いを伝えた淳子。彼女のような女性が近くにいたら、心強い相談相手になってくれるに違いない。