■効果は使うまでのお楽しみ? 技の説明がゲーム内になかった
ポケモンバトルでは、どのポケモンにどんな技を覚えさせ、どう使うかが勝敗を分ける。それほど重要なポケモンの技の効果だが、『赤・緑』では実はまったくわからない。ゲームのどこを探しても詳細が書いていなかった。
『赤・緑』のゲーム内で確認できるのは「技の名前」「タイプ」「PP(使用回数)」の3つのみだ。威力や追加効果はおろか、そもそも攻撃技なのか回復や強化の補助技なのかもわからない。当時は実際に使ってみたり、攻略本やテレビ番組から情報を集めたりしながら「この技はこういう効果があるんだな」とひとつひとつ覚えていった。
最近の『ポケモン』では、もちろん技の情報がゲーム内で確認できる。遊びやすさでいえば間違いなく新しいほうが上だ。
ただ、個人的な意見だが、技の説明がなかったのも「それはそれで」みたいな風情があった気がする。新しい技を使い、相手のダメージから技の詳細を推測したあの時間は、すごくワクワクできた。未知を解き明かす快感は『ポケモン』のテーマである“冒険”に通ずるといえないだろうか。
……とはいえ、ワクワクしながら使った”りゅうのいかり”が40ダメージの固定技だった時の複雑な感情を思うと、やっぱり技の効果は明記してくれたほうがいいかもしれない。
歴史を積み重ねて洗練されたシリーズ最新作『ポケモン スカーレット・バイオレット』を遊んでみると、至るところが親切でとても遊びやすい。『ポケモン 赤・緑』にはない“便利”がたくさんある。
だが、平成の子どもたちは『赤・緑』の“不便”があるからこそ、うまくプレイできるように考えながら遊び続けた。あの試行錯誤の日々は間違いなくかけがえのないものであり、何より楽しかったように思う。“不便”とは、必ずしも面白さを損なうものではないのだろう。