■声や仕草まで愛らしい主人公の母がかわいすぎる!
HD-2D版『ドラクエ3』では、一部のキャラクターにボイスが追加されましたが、個人的に声がついたことで、もっとも魅力がアップしたと感じたのは、声優・佐藤利奈さん演じる主人公の母親でした。オープニングで聞いた母親の声に「意外と若そうで、やけに可愛らしい」と思ったものです。
その後、夜にアリアハンの自宅に戻ると、家の外にまで出て主人公を待っている母親の健気な姿が……。冒険に出た我が子を、いつも心配しているのがみてとれます。
ほかにも、イベントシーンでのドットアニメーションで表現された仕草もやけに愛らしく印象に残ります。もっともキュンとさせられたのが、先ほど紹介した「オルテガのかぶと」を持ち帰り、母親に見せたときのリアクションです。
夫の持ち物だった「オルテガのかぶと」を見た母親は、懐かしそうにかぶとにまつわる思い出話を語ってくれます。そして主人公が、母親にかぶとを渡そうとすると、「いいのよ。母さんにはあの人との思い出がたくさんあるから」と断るのです。
さらにしんみりした空気を打ち消すように、母親はウインクしながらガッツポーズ。「さあお腹がすいたでしょう?」と、明るく料理の話題を持ちかけたのでした。
夫オルテガのことを思い出しながらも悲しそうな素振りは一切見せず、ちょっと無理をしつつ我が子を元気づける健気な姿にグッときたのは筆者だけではないと思います。『ドラクエ3』のヒロインを誰かひとり挙げるとしたら、真っ先に思い浮かぶのは主人公の母親ではないでしょうか。
なお、声がついたことで破壊力が増したキャラとして、アッサラームの「ぱふぱふ娘」も挙げておきます。あれもなかなかすごい演出なので、未経験の人はぜひパーティの先頭を男性キャラにして、訪れてみてください。
■リメイク版でも王様はケチ? しかし、それも許せてしまう裏話が……
旅立ちのときにアリアハンの王様からもらえるのは、ファミコンと同様にいくつかの装備と50ゴールドだけ。HD-2D版では、フィールドのあちこちでアイテム類を拾えるため、あまり金策に勤しまなくてもいいのですが、王様のケチさに「しみったれてるなぁ」とあらためて思ったものです。
しかし、のちにそんな王様の印象が一変する情報を知ることになります。バラモスを倒した後に「ルイーダの酒場」へ行くと、この酒場を作ったのがアリアハン王であることを知らされます。しかもその理由は、オルテガをたったひとりで冒険に送り出したことを後悔したから……という泣ける情報も。
そして、HD-2D版では新キャラを作る際に5つの種を使用できるのですが、この「種」も王様が私財を投じて集めたというのです。あの貴重な種を集めるのに、どれだけの時間と費用を費やしたのでしょうか……。そんな裏話を知ってしまうと、旅立ちのときに50ゴールドしかもらえなかったことも許せる気がしました。
HD-2D版『ドラクエ3』は、筆者と同じようにファミコン版以来、久々のプレイだった人も多いことでしょう。単に新しいエピソードが追加されただけでなく、往年のファンがエモさを感じるような粋な演出が、随所に取り入れられていたことに感心させられました。
たとえば、タイトル画面でゲームロゴが出る直前にファミコン版の「文字だけのタイトル画面」を再現していたり、パッケージの裏面にファミコン版とスーパーファミコン版のパッケージイラストを掲載していたりと、細かい点までこだわって作られているのが素直に嬉しいです。
多少不満に思う部分もありましたが、それを差し引いても30数年ぶりにプレイした『ドラクエ3』は童心にかえって楽しめました。