■念願の再会のあとにまさかの悲劇『砂の城』

 一条ゆかり氏の『砂の城』は、1977年から『りぼん』(集英社)で連載がはじまった恋愛ストーリーだ。身分違いの恋、記憶喪失によるすれ違い、そして世代を超えて愛し合う男女など、悲劇的な恋模様が描かれている。

 あらすじはこうだ。主人公の富豪の娘・ナタリーは、屋敷の前に捨てられていたフランシスと本当の兄妹のように育つ。やがて成長した2人は愛を誓い合うが、周囲に反対されたため海に身を投げてしまう。

 その後、一命を取り留めるも離れ離れになった2人。しかもフランシスは記憶喪失になり、別の女性と結婚していた。しかしナタリーの必死の追跡により、2人は運命的な再会を果たす。今度こそ2人は結ばれる……と思ったのも束の間、フランシスは交通事故で死んでしまうのだ。

 やっとフランシスの記憶が戻り、ナタリーと劇的な再会を果たしたと思った矢先に命を落とすとは……。その後、ナタリーは絶望するが、フランシスが残した幼い1人息子を引き取り育てることで、再び人を愛する気力を取り戻していく。同じくフランシスと名づけられたこの息子は、ナタリーにとって新たな愛の象徴かつ、新たな葛藤を生む存在になっていくのだった。

■長年ヒロインをサポートしてきた恋人がまさかの事故『アタックNo.1』

 浦野千賀子氏による『アタックNo.1』は1968年から『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』 )で連載された作品だ。元祖スポ根少女漫画ともいわれており、主人公の鮎原こずえがバレーボールの厳しい練習に耐えつつ、仲間と成長する姿が描かれている。

 こずえには、同級生でボーイフレンドの一ノ瀬努がいた。努は常にこずえを応援し、清らかな交際を通じて精神的な支えとなっていた。だが、ある日努は電車の線路内を歩く自殺志願者を見つけ、助けるためにとっさに線路内に入ってしまう。その結果、電車と衝突し亡くなってしまうのだ。

 自らを顧みず他人を助けようとした努の最期は、正義感あふれる彼の性格を象徴するものであった。しかし物語の終盤で訪れるこの悲劇は、当時の読者に大きな衝撃を与えた。

 精神的な柱を失ったこずえは、バレーボールを続ける気力を失ってしまう。しかし、その後、努の双子の兄が登場し、彼の言葉と存在によってこずえは再びバレーボールと向き合う決意を固めていくのであった。

 

 このように昭和の人気少女漫画では、ヒロインが愛した男性が事故などによって亡くなってしまうケースがよくあったように思う。いずれも病気や交通事故が原因で亡くなるケースが多く、その時代を反映しているともいえるだろう。

 愛する人が亡くなってしまう展開はとても悲しいが、その展開があるからこそ作品がよりドラマチックになっているともいえる。また愛する人を失くしたヒロインが、その後の立ち上がっていく姿にも勇気をもらえるだろう。

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