『ベルサイユのばら』に『砂の城』、『アタックNo.1』にも…昭和少女漫画の王道?「主人公の愛する男」が亡くなってしまう“壮絶展開”の画像
フェアベルコミックス『ベルサイユのばら』第8巻(フェアベル)

 往年の少女漫画には、ヒロインと深い愛情で結ばれるイケメンキャラが出てくる。当時読んでいた読者の多くは「自分もいつかはこんな恋愛がしてみたい」と憧れたことだろう。

 しかしそんな昭和の名作少女漫画では、ヒロインと結ばれた挙げ句、死んでしまうイケメンキャラも多くいた。ようやく成就したと思いきや、その後の衝撃展開に絶望した人もいたはずだ。

 今回は昔の王道少女漫画に登場する、死んでしまった主人公の愛する男たちを紹介したい。

■報われた愛の直後の悲劇…『ベルサイユのばら』

 池田理代子氏の『ベルサイユのばら』は、1972年から『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』 集英社)で連載された人気作品だ。

 主人公は男装の麗人・オスカル。彼女を愛したのが、オスカルの幼馴染であるアンドレだ。アンドレは幼い頃から一途にオスカルを愛し続けており、ときには報われない愛に泣き、身分の差に苦しんできた男性である。

 しかし物語終盤になると、オスカルがアンドレのこれまでの献身的な愛に気づき、見事結ばれるのである。「生まれてきて…よかった…」と2人が抱き合うシーンには、鳥肌が立つほどに嬉しかった覚えがある。

 だが、その後アンドレはフランス革命のさなか、オスカルを庇い弾丸に当たったことにより命を落としてしまう。瀕死のアンドレが“水がほしい”とつぶやく声を聞いたオスカルは、急いでコップに水を汲んで戻ってくる。

 しかし、彼女が戻った時にはすでにアンドレの命は尽きていた。愛する人を失った現実を目の当たりにしたオスカルが戦火のなかで絶望し、“自分を撃ってくれ”と叫ぶシーンはあまりにもつらい。

 アンドレが死ぬシーンはオスカルと結ばれて間もないタイミングであり、読者にとってはあまりにも衝撃的なものだった。

■師弟関係から深い愛情へ…偉大なコーチを失くした主人公『エースをねらえ!』

 山本鈴美香氏による『エースをねらえ!』は、同じく『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』 )で1973年から連載がはじまったテニス漫画だ。

 平凡な女子高生であった岡ひろみが名コーチの宗方仁に才能を見出され、一流のテニスプレイヤーに成長していく物語である。

 しかし本作では、その宗方が病気で死ぬという衝撃展開が待っている。厳しい特訓のもと、確固たる信頼関係で結ばれたひろみと宗方。しかし持病を抱えていた宗方は、ひろみがアメリカのトーナメントへ向かう途中で命を落としてしまうのだ。

 宗方は自身の余命がわずかと悟るなか、ひろみのボーイフレンド・藤堂に“俺はあいつのことを愛している”と打ち明けている。また宗方の死を知ったひろみも、その後はテニスへの情熱はもちろん、生きる気力さえ失ってしまうのだ。

 2人の関係は単なる師弟関係を超えており、言葉では表現しきれない深い愛情が育まれていたことが明らかだ。宗方が最期に残した言葉「岡 エースをねらえ!」は、本作品のタイトルを象徴的に回収するだけでなく、ひろみに対する宗方の深い愛と期待を込めた名言としても知られている。

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