■前作のシビアな世界観から雰囲気が一変…『銀河疾風サスライガー』
シリーズ三作目の『銀河疾風サスライガー』は、フランスの作家ジュール・ヴェルヌの冒険小説『八十日間世界一周』がモチーフ。賞金稼ぎを生業(なりわい)とするメンバーが機関車で星々を巡る物語が描かれた。
西暦30世紀の未来、アステロイドに浮かぶ娯楽施設J9ランドのカジノでは、宇宙最強の賭博師I.C.ブルースが勝ち続け、一晩で莫大な財を手にした。これに業を煮やした暗黒街の大物ブラディ・ゴッドが、1年間で50の星々をめぐるビッグゲームをブルースに持ちかける。
そのゲームに挑むブルースに対して次々と妨害工作が行われるも、仲間とともに跳ね返していくというのが大まかなストーリーだ。
ブルースと同行する「JJ9(ダブルジェーナイン)」のメンバーは、父の仇を探すロック・アンロック、レーサーのビート・マッケンジー、占いの権威を自称する女性バーディ・ショウという顔ぶれ。
JJ9のメンバーたちは、蒸気機関車型の自家用トレイン「J9-III号(ジェイナインスリー)」に乗車し、星から星へと移動する。
実は、この機関車こそが本作のロボット「サスライガー」に変形するのだが、なぜか巨大化させるトンデモ設定の“シンクロン原理”が無くなったために巨大化はせず、機関車サイズのロボットとなる。そのため前2作に比べると、かなり小ぶりなロボットとなっている。
さらに柴田秀勝さんによるオープニング冒頭のあの独特の口上もなくなってしまい、ちょっと寂しく感じたものだ。
同作は50の星をめぐるためか、全39話だった『ブライガー』や『バクシンガー』よりも長い、全43話構成。かつて『ブライガー』で誕生し、『バクシンガー』に登場した「ゴワハンド星」や「トーバ星、ミフーシ星」なども描かれ、J9シリーズファンとしては思わずニヤリとさせられた。
余談ではあるが、エンディングなどは前2作と比べてかなり明るい曲調になっている。これらの編曲や作曲を担当したのは、スタジオジブリ作品の楽曲でも知られる久石譲さんだ。
2014年4月8日、約30年ぶりとなるJ9シリーズの新作『銀河神風ジンライガー』の制作が発表された。水滸伝をモチーフにした新作アニメということで、ファンとしては期待せずにはいられなかったが、J9シリーズの原作・原案を手がけられた山本優さんが2018年11月に逝去され、残念ながら同プロジェクトの終了が発表された。
昭和のロボットアニメ界に新しい風を吹き込んだJ9の意志を汲む新作を観てみたかった思いはあるが、偉大なクリエイターが遺した名作を、当時を懐かしみながら振り返ってみるのも一興だ。