■最後に教わった「アニソンの極意」

 伝授してもらった方法で練習を重ねていたが、あっという間にレッスン時間も終了間近。ここで、先生が“最後の極意”を伝授してくれた。

よーこてんてー「アニソンの極意。それは気持ちを強く持って、最後まで『歌の世界に没頭して、歌手になりきること』です」

住岡「つまりはメンタルということですか!?」

よーこてんてー「そうです! なので失敗を恐れず、自信を持って歌ってみてください」

 やはり「メンタル」は大事である。難しいアニソンを歌っていると、下手すぎる自分が恥ずかしくなったりするが、そういう思考を取っ払って歌った時が「上達する」のだそうだ。私はこのレッスンでずっと柔和な笑顔ながら、的確にアドバイスをくれる「よーこてんてー」の虜になっていた。先生が言うなら間違いない。

 私は一切の恐れを捨て、自信を持って『紅蓮華』を歌ってみせる!

 ということで最後に、本日のレッスンの集大成である『紅蓮華』を歌唱した。レッスン前の歌唱ではリズムについていけず、高音が出なくて完全に“無音棒立ち”の時間があったが、今回はそれがまったくなくなっていた。お、上達してる……!?

 これまでのカラオケではごまかすことや、恥ずかしさにばかり気を取られていた。でも、先生が寄り添って褒め続けてくれたおかげで、自信がついたのか本気でのびのびと歌うことができ、楽しめた。

 今までは音をなんとか合わせようとやっきになり、歌詞まで考える余裕もなかった。しかし、アドバイス通り“歌の世界”に没頭してみると、『紅蓮華』って『鬼滅の刃』のキャラクターの叫びみたいだな……と気付いて、なんだか感動した。カラオケって、こういう楽しさもあるのか……。

 もちろん、以前よりも高音が出せたり、息が続いたりして、「歌」という体裁を保てるようになっていたというのも大きい。初級、中級、上級と重ねてきたレッスンが身になっているのが分かった。歌がうまい人からするとまだまだ下手だろうが、非常に気持ちよく歌えたのは確かだ。

「音域を広げる」「声量を高める」ことは1回のレッスンでは限界があって、努力の積み重ねで叶うものなのだろう。しかし今回、たった90分超のレッスンでも、「音痴だから」とカラオケから逃げ回っていた女の人生を変えるには、十分すぎるほど価値がある機会だった。

 はじめて「自分の声」で歌えた感覚がして、終わった後はすごく達成感でボーッとしてしまったくらいだ。「なにかに挑戦するって楽しいな」と久しぶりに実感した。歌に苦手意識がゼロになったといえばウソになるが、これからも地道に練習して、「カラオケに臆さず挑めるようになりたい!」と思えた。「私は音痴で歌うことが嫌いだ」と30年間、頑固に思い込んでいたことから、ようやく解放された気分だ。

 あと、よーこてんてーがレッスン中、ずっと褒めてくれるので自己肯定感も爆上がりした。自分の可能性を広げながら、挑戦するのは高揚感も感じられる。

 つまり、結論としては「ボイストレーニング」は最高! である。音痴を改善したい人はもちろん、何かを成し遂げたい人にもオススメである。

こちらが「よーこてんてー」。都内でアニソン特化のボイトレ教室を開いている。

よーこてんてー
ボイストレーナー歴約13年。これまでにのべ15000人以上の声を聴き、ボイストレーニングを提供。現在も月に約100名の受講生を抱え、近年ではアーティスト・声優・VTuberを中心に出張ボイストレーニングやライブ帯同など幅広い現場で活躍中。アニソンに特化した専門性と、科学的アプローチを組み合わせた指導により、多くの受講生やプロフェッショナルから信頼を得ている。

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