「いい曲なのになぜか怖い…」歌詞や映像が強烈すぎたNHK『みんなのうた』の“トラウマ系”名曲の画像
「NHK みんなのうた」DVD-BOX

 1961年の放送開始以来、1500曲以上の楽曲を日本中に届けてきたNHK『みんなのうた』。60年代の民謡に始まり、70年代には『南の島のハメハメハ大王』などの有名曲が誕生、2000年代には椎名林檎さんの『りんごのうた』や宇多田ヒカルさんの『ぼくはくま』のような人気アーティストによる書き下ろし曲も放送されてきた。

 明るい楽曲が多いなか、しばしば人々に“怖い”という記憶を植え付けるミステリアスな楽曲が登場していたのも『みんなのうた』の特徴だ。『メトロポリタン美術館』や 『月のワルツ』などは、美しいメロディとともに不穏な世界観の映像が子ども心に強烈なインパクトを残した名曲で、今でもトラウマ的思い出とともに語り継がれている。今回は、そういった「ちょっと怖い楽曲」をいくつか振り返ってみよう。

■女の子が心配になるという声も…『泣いていた女の子』

 まずは70年代の放送から、1979年に初登場した『泣いていた女の子』を振り返る。作詞・作曲を『山口さんちのツトム君』を生み出したみなみらんぼうさんが担当し、東京放送児童合唱団が歌っていた。

 この曲の主人公は、一人で母親を待つ少女。いつから待っているのかは不明だが、外はすでに夕暮れ時で少女は寂しさから泣いてしまう。そして、団地の階段のような場所で悲しそうに座り込む彼女の周りに、体が異様に長いネコやUFOなどが登場し、カオスな雰囲気が高まっていく。

 特に少女に何かするわけではないのだが、なぜだかこの未知の物体たちがそこはかとない怖さを煽る。その後、泣きやまない少女をよそに夜が訪れるも、母親は帰らずそのまま曲は終わっていく。

『泣いていた女の子』はまったりとしたテンポに少年少女の美しい声が響き、全体的にどこかノスタルジックな雰囲気をまとっている。自分が子どもの頃に一人で留守番していたときの寂しさを思い出して少女に感情移入し、不安な気持ちになってしまったという人も多いだろう。結局母親が帰ってきたのか明かされないままで、ちょっとしたモヤモヤ感も残る楽曲である。

■美しいメロディと幻想的な世界観に惹き付けられる『まっくら森の歌』

『まっくら森の歌』もまた、「怖い」という声が多くあがる王道の楽曲だ。初放送は1985年で、作詞・作曲・歌を谷山浩子さんが手掛けている。

 映像で登場するのは、仲良しのネコとネズミ。森の中を散歩していた二匹は、突如闇に包み込まれまっくら森へと迷いこんでしまう。青を基調とした薄暗いまっくら森にはフクロウをはじめとする不思議な生物が動き回り、幻想的ながらもほんのりと恐怖が漂っている。そして、謎の男が現れ、彼が持つ箱に闇が吸い込まれて森に光が戻っていく。

 大人の立場で見ると、怖いよりもむしろ綺麗に見える映像だが、子ども目線では不思議な生物と森全体の暗い色調は怖い印象を持ってしまうかもしれない。

 さらにこの曲が怖いと言われるゆえんは、謎めいた歌詞にもある。あべこべな言葉の並びや謎かけのような言葉たちは、「どういう意味?」と見ているこちらをまっくら森に引きずり込むくらいのミステリアスさだ。迷いや葛藤を抱える心を表現しているのか、不思議な世界を表現しているのか……。いずれにせよ、これらが組み合わさることで不気味な雰囲気が増すのである。

 さらに寂しさを感じさせる美しいメロディが幻想的で摩訶不思議な世界を彩っていた。そんな独創的な曲だからこそ、長い間人々の記憶に残るのだろう。

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