2000年から放送された『仮面ライダークウガ』は、「平成仮面ライダー」シリーズ1作目にして、今でも語り継がれる伝説的な作品だ。この『クウガ』の成功がなければ、平成から令和と、現在も続く『仮面ライダー』シリーズは存在しなかったと言っても過言ではないだろう。
そこで今回は『仮面ライダークウガ』がいかにすごかったのか、その魅力を掘り下げていきたい。
■シリーズのベースを作った「多彩なフォームチェンジ」
複数のライダーが登場する以降の作品と違い、本作に登場する仮面ライダーは主人公・五代雄介が変身する仮面ライダークウガのみだ。孤独な戦いだが、クウガにはそれを補うように多くの戦闘フォームが存在する。
バランスに優れた赤色の「マイティフォーム」を基本形態に、特化型の「ドラゴンフォーム」「ペガサスフォーム」「タイタンフォーム」を状況に応じて使い分けて戦った。また、白色の「グローイングフォーム」は、ほかと比べ能力に劣るが、省エネであることを生かし、傷を癒していたのも面白い。
フォームはまだまだある。各フォームに雷の力を加えた「ライジングフォーム」、さらに強化した「アメイジングマイティ」、そして最終形態の「アルティメットフォーム」と、クウガはパワーアップを果たすことで次々と強敵を倒していったのだ。
先輩ライダーには『仮面ライダースーパー1』の“ファイブハンド”や、『仮面ライダーBLACK RX』の“ロボライダー”や“バイオライダー”など、換装武器やフォームチェンジをすることで戦うライダーがいたが、『クウガ』はそれら後期昭和ライダーの要素をうまく取り入れつつ、より洗練された形で披露した。このフォームチェンジを駆使する戦い方は、現在放送中の『仮面ライダーガヴ』にも残る平成・令和ライダーのベースとなっていると言えるだろう。
■子どもだましはしない…徹底した「リアル志向」
本作のメインターゲットはあくまで子どもである。だが、徹底したリアル志向で、大人も満足できる作品となっている。
たとえば、本作はドラマパートに非常に力を入れている。登場人物たちの人間関係や社会要素なども丁寧に描かれており、時間も割いている。さらに、場面転換時、“場所”と“時間”を表記することで、特撮では当たり前の“場所ワープ”などあえてできないような作りとなっていた。
またリアル志向は、人が襲われる描写にも現れている。たとえば、第15話「装甲」、第16話「信条」に登場したメ・ギャリド・ギは、怪人にもかかわらずトラックを使って人を殺す。人々をトラックで路地に追い込み、壁に挟んで圧死させるという子ども向け番組とは思えない非情ぶりを見せていた。
さらに、第23話「不安」で戦った怪人メ・ガリマ・バは、カップルとすれ違う合間に大きな鎌で二人の首を斬った。「振り向くな」という言葉に後ろを向いたカップル、そして斬られた頭部が横にスライドするという衝撃的な描写は、『仮面ライダー』シリーズ屈指のトラウマシーンとなり、視聴者に大きな衝撃を与えた。