■怪演に称賛の声が続出した野口五郎さん

 野口五郎さん演じる早乙女仁は、捜査一課の管理官といういわゆるキャリア組だ。当初は弐係の手柄を横取りしようとする嫌味なエリートといった立場だったが、次第に朝倉の闇に巻き込まれ、物語の重要人物となる。その片鱗が見え始めたのは、真山にSWEEPの監視をつけた9話以降だった。

 真山を危険人物とし、本格的に処分を下そうとする早乙女。柴田から「真山さんに生きていられると…何か困ることがあるとか?」と突っ込まれると、目をピクつかせて震えるほど感情を露わにしていく。本作の野口さんは、こういう見ている者を不安にさせる表情の演技が素晴らしかった。

  そして、早乙女の中身が朝倉になっていると判明した最終回、野口さんの怪演ぶりはピークに達する。「ゲームだった」と真山に語った早乙女は、駆けつけた警察に対して「俺はなぁ……お前らと違うんだよ。俺にとって死は無限だ。お前らにとって死は全ての終わりだ」「壊れた人形、腐っていく肉。ウジ虫、ウジ虫、ウジ虫!」と叫んで高笑いを上げた。

 だが、油断したところを真山に撃たれ「き、気持ちいぃ…」とゾクゾクするセリフを呟きながら命を落とす。

 早乙女役については、人気歌手でもある野口さんからはまるで想像がつかないアブない姿に、視聴者からも「怖すぎ」と称賛の声が多く寄せられていた。それにしても、明確にはされていないが早乙女の中身はどのタイミングで朝倉と入れ替わったのだろうか……。それを考えながら野口さんの演技を見返してみるのも面白いかもしれない。

■新キャラながらインパクトを残した生瀬勝久さん

 最後は、特別篇「死を契約する呪いの樹」から登場した、生瀬勝久さん演じる遠山金太郎を振り返りたい。この特別篇はシリアスな連ドラ後半に比べコメディ要素が多い作品だったのだが、金太郎はその中でも笑いと癒しをもたらしてくれる存在だった。

 役柄は、八王子西署の署長になった柴田の後任として弐係に配属された京都大学卒(4浪)のキャリア。自称、遠山の金さんこと遠山金四郎の13代目の末裔である。 

 バスの中で学生の参考書を先読みし、捜査資料を持つ彩とぶつかってその資料を見ただけで「犯人わかっちゃったんですけど」と言う、ドラマの柴田と同じ初登場スタイルでファンを沸かせた金太郎。柴田も出演する中、随所に彼女のパロディを溶け込ませていたのは見事な演出だ。

 ただし刑事としての手腕はいまいちで、「とでも言っときましょか」の決めセリフとともに自信満々で真相を暴こうとするも、推理力と観察眼が極めて低いためことごとく答えを外す。やる気だけは誰よりもあるせいで、ほぼ空回り状態なのが見ていて面白い。

 さらに、野々村が飲んでいたバイアグラ入りのメロンパンを真山と半分こして食べてしまい、二人揃って柴田に反応してしまうというシュールな展開も笑いを誘った。このコミカルな性格は、同じく生瀬さんが演じる『TRICK』の登場人物・矢部謙三のキャラクターへと引き継がれていく。 

 

 柴田&真山に限らず、味のある脇役が揃っていた『ケイゾク』。どの俳優もハマリ役と言っていいほどキマっており、彼らがいたからこそ作品が盛り上がった。ストーリーはもちろん、個性豊かな登場人物のやりとりからも目が離せない。

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