■ワノ国の侍はヤクザに!? 傳ジロー・狂死郎

 カイドウが支配するワノ国にて、黒炭家御用達両替屋、将軍オロチに仕える侍の一人にして、トップのヤクザでもある「狂死郎一家」の親分が、居眠り狂死郎である。

 しかし、本当の名前は狂死郎ではない。かつての九里大名、光月おでんに使える赤鞘九人男が一人、傳ジローこそが真名であった。

 もともとは青みのある黒い長髪、サングラスのような眼鏡が特徴的な人物で、錦えもんらとともにおでんに仕えていた頃には、シュッとした凛々しい顔立ちをしていた。

 しかし20年前、カイドウとオロチの手によって主君であったおでんや奥方・トキを失い、長年仕えた主を守ることができなかった自身への不甲斐なさ、敵への憎悪による多大な精神的ショックから、髪色、眼、そして表情までもがガラリと変化。

 黒かった髪は青色に、目元は鋭く切れ長のツリ目に、そして額や頬には敵への怒りを体現するかのように血管が浮かび、本人をして「“怒り”という妖怪に取り憑かれた顔」と言うほど変貌してしまったのだ。

 幼い日和と再会した際にこれを暴露し、彼女に“小紫”という名前を与えたのも彼である。以後、彼女を守るべく、その見た目の変化を活用して敵にも味方にも正体を明かさず、憎きオロチに20年以上仕え続けてきたのだ。

 民衆からの圧倒的な人気を得ても、オロチの前に姿を現しても、彼が傳ジローだと気づく者はいなかった。それは、ルフィらがやってきた討ち入りの日まで続き、兎丼の常影港にて錦えもんたちの前で正体を明かすに至った。

 自身の怒りだけで顔を変化させ、それが敵も味方も気づかないほどであったことも驚きだが、怨敵に仕える屈辱と怒りを抑え込み、20年もの間従い続けてきた彼の内情は外見の変化以上に大きくうねり動いていたことだろう。

 

 『ONE PIECE』ではコビーやヘルメッポのように成長によって大きく見た目が変化するケースはままあるが、今回紹介したように改造や年齢、そして怒りによって見た目が変わることもあるから面白い。

 変化や過去が明かされた際、驚いた読者は少なくないだろう。今後も、過去のキャラが驚きの姿で再登場する可能性があるかもしれない。今後も物語の展開に注目していきたいところだ。

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