■社会現象にもなった安達さんのセリフの数々

 『家なき子』がヒットした理由に、安達さんが言った数々の名セリフがあるだろう。

 まずは、上述した「同情するならカネをくれ!」だ。このセリフは担任である片島が“人のお金に手を出すのは良くない”と、すずをたしなめたときに「…同情するならおカネちょうだい…」と反論し、次に「同情するならカネをくれ!」と絶叫するシーンで登場した。

 まだあどけない安達さんが子ども特有の甲高い声で“金が要る!”と叫ぶセリフは、当時の視聴者に衝撃を与えた。折しもドラマ放送時はバブル崩壊直後。多くの人々が経済の厳しさやお金の価値を痛感していた時代背景も、このセリフの印象をさらに強くした一因であろう。

 このほかにも「お母さんの保険金なんて絶対やらない!」や「(あんたなんて)カネゴンだ!」という過激なセリフを叫びまくる安達さん。

 いずれのセリフも日常生活ではめったに聞くことのない言葉である。しかしそれらのセリフを真っ直ぐな目でストレートに訴える彼女の姿には、視聴者の心を引きつける力があった。これらの言葉が特別な響きを持つのは、純粋さと幼さが残る少女の安達さんが発したからこそだろう。

 

 平成を代表する天才子役・安達祐実さんが主演を務めた『家なき子』は、その後も続編が制作されている。最高視聴率は両者ともに30%を越えた伝説的ドラマだ。

 子役が主役となった話題作はいくつかあるが『家なき子』に並ぶドラマはなかなかないように思う。視聴者に大きな衝撃を与えた本作は、悪役の過激な描写も含め、安達さんの演技力の高さを証明するドラマであった。

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