「芝居の迫力ありすぎ…」名作ドラマ『家なき子』天才・安達祐実と過激な悪役たちの「圧巻演技」を振り返るの画像
安達祐実  写真/ふたまん+編集部

 子役から大女優となった芸能人は少なくないが、平成の時代を代表する天才子役といえば、やはり安達祐実さんだろう。現在、安達さんは話題のNHK土曜ドラマ『3000万円』で主役を務めており、闇バイトにかかわってしまったがゆえに転落していく主婦を熱演している。

 そんな安達さんを有名にしたのが、1994年に放送された『家なき子』だ。本作は最高視聴率が37.2%と高視聴率を記録し、安達さん演じる相沢すずのセリフ「同情するならカネをくれ」は、ドラマが放送された年のユーキャン新語・流行語大賞を獲得している。

 今回は『家なき子』がどのようなドラマであったか、安達さんの名演技とともに振り返りたい。

■美少女のイメージを覆した!? 安達さんの初・汚れ役ともいえるドラマ

 『家なき子』は1994年4月より、日本テレビの土曜日夜9時から放送されたドラマである。

 安達さん演じる主人公・相沢すずは、病弱な母親(田中好子さん)と酒と暴力に溺れる父親(内藤剛志さん)のもと、貧困家庭で育った小学6年生の少女だ。ドラマは貧しさと世間の冷たさのなかで、すずがたくましく生きる様子を描いている。

 安達さんはこの当時わずか11歳。9歳のときに出演したハウス食品『咖喱工房』のCMでは「具が大きい」のフレーズで一世を風靡し、その後、1993年には映画『REX 恐竜物語』で主役を務めるなど、華やかな雰囲気のある美少女子役として人気を博していた。映画『REX』では恐竜の赤ちゃんとダンスをするなど、ほんわかした雰囲気の演技が愛らしく、まさに天使のように可愛らしかった。

 だが、『家なき子』のすずは、生き抜くためには大人の前で平気でウソ泣きをし「ババア!」といった過激なセリフも満載。安達さんがこれまで演じてきた役柄とは異なり、いわば汚れ役とも言えるキャラクターは大いに注目を集めた。

 しかし持ち前の高い演技力で、安達さんはすずを見事に演じた。とくにズルい大人たちをキリッと鋭く睨みつける目力には凄みがあり、視聴者に大きなインパクトを残した。

 本作に登場する大人の多くはすずの敵であったが、唯一の味方は野良犬のリュウだ。いつもすずに寄り添い、彼女を助ける従順なリュウはたちまち人気となり、本名である“ピュンピュン”という名前も話題となった。

 ちなみに当時の安達さんは“泣く演技”が苦手だったそうで、過去のバラエティ番組にて「家なき子1は、ほぼ目薬」と、明かしている。そんなことすら感じさせない子役時代からの圧巻の演技力には、あらためて舌を巻いてしまう。

■ここまでする…!? すずを陥れる悪役が凄すぎた

 『家なき子』の原案と企画を担当したのは、平成ドラマのヒットメーカー・野島伸司さんだ。彼が手がけるドラマの多くには必ずと言って良いほど「ひどい悪役」が登場するが、本作も例外ではなかった。

 まずはすずをトイレに閉じ込めるなど、彼女をいじめるクラスメイトたち。そしてその担任・保阪尚希さん演じる教師・片島智之は、当初はすずの良き理解者であったが、後半は金の魔力に魅入られていく。

 そして、すずをことあるごとにいじめ抜く意地悪な叔母・園田京子を演じたのは小柳ルミ子さん。その娘の真弓も一緒になってすずに犬の真似を強要させるなど、激しいいじめを繰り返す。当時、本作を視聴していた筆者だが、彼女たちのいじめは見ているだけで本当にストレスを感じてしまうほどひどいものであった。

 そして酒と暴力に明け暮れる、内藤さん演じるすずの父・相沢もインパクト大。内藤さんは今でこそエリート刑事役のイメージがあるが、罵声と暴力ですずを追い詰めるシーンはとにかく恐ろしいのひと言。唯一の味方であるすずの母親・陽子は穏やかで優しいものの、今考えるとどうしてこんなダメ夫とずっと一緒にいたのか少々不思議である。

 印象的だったのが、物語中盤に登場した菅井きんさん演じる老婆の女スリ・田畑光江だ。すずと光江は敵対しつつも、光江は最後にすずの罪をも背負って捕まってしまう。

 このシーンは『家なき子』屈指の感動シーンとして知られているが、すずが「ババアー!」と絶叫したシーンは迫力がありすぎて、翌日学校ではその話題で持ちきりだった記憶がある。

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