マスタードラゴン、黄金の竜、レティス、ケトス…歴代『ドラゴンクエスト』シリーズ「空飛ぶ伝説の生物」が生み出す「謎」と「ロマン」の画像
HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』メインビジュアル (C)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX

 11月14日、ついに発売されたHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』。

 リメイク版となる本作でも、不死鳥「ラーミア」の神々しい姿を確認することができる。ラーミアはその背に乗ることで世界中のさまざまな場所へ運んでくれるという、物語を進める上で非常に重要なモンスターだ。

 数ある『ドラクエ』シリーズのなかには、ラーミアのように伝説のモンスターたちが空を飛んで主人公たちを運んでくれるタイトルがいくつかある。本記事では、そんな空を飛ぶ伝説のモンスターたちを振り返っていこう。

■「神なのに...?」が多すぎた悲しき竜「マスタードラゴン」

 まずは『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』より、「マスタードラゴン」だ。

 初登場は『ドラクエ4』で、天空城に座す竜の神として主人公たちと対面する。同作ではデスピサロの討伐を主人公に託したのち、「てんくうのつるぎ」のパワーアップと経験値を与えてくれた。

 続く『ドラクエ5』では、プサンという人間に姿を変えて登場する。だが、このプサン、止まらなくなったトロッコから20年もの間脱出できずにいるという衝撃の状況下に置かれていた。

 主人公たちが封印されていた力の解放を手助けすると、マスタードラゴンは竜の姿に戻り、授けられた「天空のベル」を鳴らすことで世界中を飛び回ることができるようになる……という流れである。

 あくまでも“神”という位置づけのマスタードラゴンだが、ラスボスの戦闘には加わらないほか、20年もトロッコに乗り続けていたという間抜けなエピソードゆえ、実はプレイヤーから反感を買ってしまいがちな存在でもあるのが面白い。

 まことしやかに囁かれてるのが、世界を滅ぼしかねないほどの強大な力を有しているため、その力を自ら封印し、地上の争いからあえて距離を置くようになったのではないかという説である。

 確かに、想像をはるかに超える力を有しているとしたら、マスタードラゴンを呼び出す際に「私を よぶのなら もっと広い場所が 必要だ」と言われることにも意味を感じてしまう。

 とはいえ、ゲーム上でしかマスタードラゴンを知らない多くのプレイヤーにとって、評価が低くなってしまうのは仕方がないというもの。今後もし同シリーズがリメイクされることがあれば、マスタードラゴンの汚名を返上するようなエピソードが追加されることを願いたい。

■答えがないからこそ語り継がれてきたロマン「黄金の竜」

 続いては、『ドラゴンクエストVI 幻の大地』のスーパーファミコン版パッケージで主人公たちを背に乗せている姿が印象的な「黄金の竜」だ。

 本編ではゲーム開始直後、ミレーユがオカリナを吹くと現れてムドーの城まで運んでくれるのだが、以降特別な言及がないため、その存在は謎に包まれたまま。それゆえ、実態については多くの考察がされているが、なかでも「黄金の竜=バーバラ」というのが有名かもしれない。

 大魔女の血を引くバーバラは強力な魔法使いとして大いに活躍してくれるが、記憶喪失であること、パーティメンバー唯一の夢の世界の住人であること、ルイーダの酒場で待機させられないこと、理由不明のまま一時離脱すること……など、特殊な要素が多いキャラでもある。

 バーバラが黄金の竜である説が語られる理由としては、彼女の出身である魔法都市カルベローナにあるだろう。この街の住人は精神と肉体を分離させることができ、その肉体を別の形へと変化させることが可能であるという。そして、「強い魔力を持つバーバラならドラゴンにもなれるのでは……」といった内容の発言をする住人もいるのだ。

 加えて、スーパーファミコン版で見られたバーバラと黄金の竜が同じ画面に登場するという、考察を一蹴してしまう“矛盾”も、その後のリメイク版で同じ画面には登場しないようにわざわざ修正されている。

 この考察に明確な答えは出ていないものの、1996年の堀井雄二さんへのインタビュー記事内では、バーバラがドラゴンになるという設定が裏にあったことが言及されている。そして同時に、プレイヤーに世界観を想像させる余地を残しているという旨も語られていた。つまり、その説を否定するも肯定するも間違いではないということだ。

 プレイヤーごとに異なる視点でその世界を捉え、唯一無二の思い出になりうる『ドラクエ』らしい粋な仕掛けであると言えるだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3