まさにRPGの完成型…ファミコン版『ドラゴンクエスト3』が導入した「画期的システム」を振り返るの画像
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』公式サイトより  (C)1988, 2019 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved. (C)SUGIYAMA KOBO

 1988年2月10日に発売されたファミコンゲーム『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』。発売日に学校や会社を休んでゲームソフトを買うために並ぶ姿が報道され、社会現象にもなった作品である。

 シリーズ3作目となった本作は、前作までに比べて遊びやすくなるシステムが多数盛り込まれた。それまではコンティニューのために「ふっかつのじゅもん」という長い文字の羅列を記録しておく必要があったが、同作からバッテリーバックアップシステムが採用。城や教会で「ぼうけんのしょ」に記録してもらうことで、手間をかけることなくコンティニューができるようになった。

 また、後の作品にもたびたび登場する転職システムも『3』で初採用されており、「戦士」「僧侶」「魔法使い」といった職業が市民権を得た作品とも言えるだろう。

 今回は11月14日にHD-2D版が発売され再び脚光を浴びた『ドラクエ3』について、あまり注目されることはないが、同作から導入された画期的なシステムを振り返りたい。

■キメラのつばさとルーラの仕様変更

 まずはアイテムの「キメラのつばさ」と呪文の「ルーラ」である。いずれも以前訪れたことのある城、町、村などに瞬時に移動できるのだが、行き先を選べるようになったのはこの『3』が最初だった。

『1』ではラダトーム城に戻ることしかできなかったし、『2』では最後に復活の呪文を聞いた場所に瞬時に移動できるという仕様だった。それが、『3』からは一度訪れた場所であれば、一部例外を除きほとんどの城、町、村などに移動することができるようになった。

 シリーズが進むごとにマップがどんどん広くなっていく『ドラクエ』では、一度行った場所ならどこへでも行けるという仕様変更でかなり楽になったといえるし、特に序盤ではアリアハンの勇者の家に泊まって宿代を浮かせていたプレイヤーも多く、この仕様変更に助けられていたことだろう。

 さらに今回のHD-2D版では洞窟などの地点へもキメラのつばさで飛ぶことができる。グラフィックにともないマップがより広大となった同作では非常に便利な機能だ。

■昼と夜の表現

『ドラクエ3』にはこれまでのゲームにはなかった斬新なアイデアが取り入れられた。それがこの昼と夜の表現である。これまでのゲームは常に昼であり、夜になることはなかった。それがこの作品から昼と夜が登場し、ゲーム内に時間の概念が生まれることで一気にリアル感が増した。

 昼と夜で異なるセリフをしゃべる町の人や、夜にならないと行けない場所、昼と夜とで違う敵が登場するなど、さまざまな面で昼と夜の違いを明確に感じることができ、ファミコンの少ない容量で、よくこれだけの表現ができたものだと感心するのである。

 容量の都合でいろんなところを削っており、ファミコン版『ドラクエ3』ではオープニングすらも削られていたが、昼と夜の概念は残っている。

 個人的推測だが、エンディングを迎えたとき、常に夜だったアレフガルドが昼になるという演出がある。その演出のために昼と夜の概念を残す必要があったのではないか。もしかしたら、アッサラームのぱふぱふイベントのためだったかもしれないが……。

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