「ネーミングからすでに個性的すぎる!」倒しても憎めない…スーパーファミコン名作『MOTHER2』味わい深い敵キャラたちの画像
スーパーファミコン用ソフト『MOTHER2』(編集部撮影)

 コピーライターの糸井重里氏がゲームデザインを手がけたRPG『MOTHER』シリーズ。その第1作は1989年にファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された。現代のアメリカを舞台にしたRPGは当時から今でも新鮮なもので、各所に散りばめられた“糸井節”にクスッとさせられたりホロリと涙したりしたものである。

 続編である、スーパーファミコン『MOTHER2 ギーグの逆襲』(1994年)ではハードの進化により、グラフィックをはじめとする表現が大きく進化した作品でもあった。

 小さな町・オネットに住む少年ネスが、裏山に落ちてきた隕石から現れた「ブンブーン」と名乗る謎のカブト虫に地球の危機を伝えられ、旅立つというストーリー。超能力が使える少女ポーラや専用の銃や兵器を使いこなす少年ジェフ、そしてランマという国の王子プーらと出会いながら旅を続け、ネスの成長を描いていく。

 今回は今年で発売から30周年を迎えた『MOTHER2』について、どこか憎めない感じの見た目や名前の「敵」たちに注目したい。いずれも糸井節あふれる魅力的なキャラたちばかりだ。

■ネーミングセンス抜群「オレナンカドーセ」「マル・デ・タコ」

 ネーミングのおもしろさでとにかく群を抜いているのが「オレナンカドーセ」だろう。その見た目はなんとも形容しがたく、ソフトクリームのような、そうでないような不思議な生き物(そもそも生き物なのか?)である。

 序盤に登場する、いわゆるザコ敵なのだが、ザコ敵の中でもとにかく弱い。

 キャラクターを印象付けているのは「オレナンカドーセ」という名称だ。意味不明なカタカナの羅列かと思いきや、日本語として読むと「俺なんかどうせ……」という自虐的なセリフになっているのだ。

 つまりは「俺なんかどうせ弱いから」のようなイメージで作られたと思われる敵なのだが、それをそのまま名前にし、しかもカタカナ表記することで、ちょっと特殊な印象を出している。しかも名前通りにしっかり弱い。この名称だけでもプレイヤーの印象に残り続ける敵キャラとなっているのである。

 他に名称で印象的だったのは、タコ型ロボット「マル・デ・タコ」もそうだろう。その名のとおりまるでタコのような姿をしているが、タコではない。

 名前もそうだが、なんといっても秀逸なのは、同時期に「タコ消しマシン」が手に入るということだろう。この「タコ消しマシン」というのは、道を塞ぐように置かれている「タコ」の形のオブジェを消すためだけに登場するイベントアイテム。

 同時期に登場する敵ということで、「マル・デ・タコ」にも当然「タコ消しマシン」を使いたくなるところだが、消すことはできない。なぜならタコではないからだ。糸井氏の手のひらの上で踊らされている感がハンパない。

 さらにストーリーを進めていくにつれ、色違いのタコ型ロボットが登場してくるのだが、名前も「ミタ・メ・タコ」「カナ・リ・タコ」と徐々にタコに近づいてくる。だが、タコではない。もはやタコ消しマシンを使うまでもない。

 そしてラストダンジョンである過去の最低国には、ついにこのタコ型ロボットの完成形が登場する。その名も「タコ・ソ・ノモノ」である。このネーミングにはもはや笑うしかない。

 タコそのものだったら、もしかしたらタコ消しマシンが効くかもしれないが、ここまで来たほとんどの人は試すことすら考えなかったはずだろう。このタコ型ロボットシリーズも忘れられないネーミングの敵キャラの1つである。

■イベントで強烈なインパクトを与えた「ゲップー」「マニマニのあくま」

 イベントで登場するボスとしてインパクトを与えたのは、なんといっても「ゲップー」だろう。

 ストーリーの中盤でゲップーの秘密基地を訪れるが、まずその見た目の気持ち悪さが印象的である。しかも仕掛けてくる攻撃が「臭い息」なのだ。ネスたちを気持ち悪い状態にしてくる攻撃だが、実際にゲップ音をサンプリングした効果音を使っているので、プレイしている子どもたちにも気持ち悪さを与えた難敵である。

 そんなゲップーは「はえみつ」というハエが集めた蜜が大好物で、与えると一心不乱に貪り食うのだが、その様子を想像するだけで気持ち悪い。最新のゲームでは表現できないシーンかもしれない。

 もう一つストーリー上で印象に残るボスが「マニマニのあくま」である。

 このマニマニのあくまは、本作のラスボスのギーグが生み出した幻影マシーンである。ネスたちがフォーサイドという町を探索していると、突如としてフォーサイドの町に似たムーンサイドという異世界に入り込んでしまうのだ。

 このムーンサイドは『MOTHER2』をプレイした人の多くが「怖かった」と口にするほど不気味なエリアであり、登場してくる敵も異形なキャラが多かった。

 特にインパクトがあったのが、脳みそのような時計のようなよくわからない姿をした敵「うしなわれしきおく」である。もう名前からして怖い。この怖いムーンサイドで出てくる敵は、それまでとは違って変なやつらばっかりなので、早く抜け出したいと思ったプレイヤーは多かったことだろう。

 そんなムーンサイドを作り出していたのがこの「マニマニのあくま」であり、倒すことでムーンサイドから脱出できる。ムーンサイドのイベントの怖さもあって、子どもたちに大きな衝撃を与えたボスキャラであった。

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