■取り残されたその姿に思わず視聴者も涙…『巨人の星』

 “アニオリ展開”では、キャラクターのちょっとした日常が描かれることも少なくはないが、どこか物悲しい描写でファンを涙させたのが、原作:梶原一騎さん、作画:川崎のぼるさんのタッグが手掛ける名作野球漫画『巨人の星』のアニオリエピソードだ。

 野球一筋で育った熱血漢・星飛雄馬が数々の強敵たちと激闘を繰り広げていく本作において、飛雄馬の不器用な日常シーンが描かれるのが、アニメ版第92話「折り合わぬ契約」なるエピソードである。

 これまでひたすら野球に時間を費やしてきた飛雄馬だったが、アームストロング・オズマに「野球ロボット」呼ばわりされたことで、自身の生き方に疑問を持つようになってしまう。

 この言葉をきっかけに必死に失った“青春”を取り戻そうと奔走する飛雄馬は、知り合いらに声をかけ、大きなケーキやチキンを用意した“クリスマスパーティー”を開くことを計画するのである。

 しかし、招待したはずのライバルたちは飛雄馬と慣れ合うことを良しとせず、あえてこの誘いを断ってしまう。挙句、招待していた明子からも欠席の電報を入れられてしまい、なんとパーティーには誰一人としてやってこないのだ。

 一人ぽつんと取り残された飛雄馬は、脳裏に響き渡る「野球ロボット」の言葉と物悲しさに耐えきれず、涙を流しながら大暴れ。料理やケーキはもちろん、テーブルや椅子、窓ガラスまで破壊し、会場をめちゃくちゃにしてしまった。

 飛雄馬が自身の生き方に苦悩する不器用な姿と、そのあまりにも物悲しい結末が思わず視聴者の涙を誘う、なんとも印象的な“アニオリ展開”だった。

 

 原作にはない新たな展開や描写で作品の世界観を広げてくれる“アニオリ展開”。ときにはその強烈過ぎるエピソードで原作ファンを驚愕させてしまうことも珍しくはないが、キャラクターの思わぬ一面を垣間見ることもできるのも、アニオリならではの醍醐味だといえるだろう。

 驚きの展開によって今もなおファンの心に焼き付いた数々の“アニオリ展開”を、ぜひご自身の目で確かめてみてほしい。

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