躍動感溢れる描写で再現される名場面、声優による迫真の演技など、漫画作品を原作としたアニメには数々の見どころがあるものだ。アニメだからこそできる“オリジナル展開”も、そんな魅力の一つではないだろうか。
原作にはなかった新たな展開にファンがニヤリとする一方、ときにはあまりにも衝撃な展開で原作ファンを驚かせてしまったエピソードも……。今回は、漫画原作にはなかった凄まじい展開で視聴者の度肝を抜いた「アニオリ展開」を見ていこう。
■鍛え直した“Z戦士”たちの実力は必見!『ドラゴンボール』
数々の名作漫画を世に送り出してきた『週刊少年ジャンプ』(集英社)の歴史のなかでも、圧倒的な国民的人気を誇る鳥山明さんの『ドラゴンボール』。10月より新作アニメ『ドラゴンボール DAIMA』も話題沸騰中だが、本作でとんでもない“アニオリ展開”が描かれたのが、『ドラゴンボールZ』で放送された第94話「元気玉の超破壊力!!生き残ったのは誰だ!?」、95話「ついに変身!! 伝説の超サイヤ人・孫悟空」でのエピソードである。
原作での「フリーザ編」のさなかに差し込まれたエピソードで、舞台はあの世にある“界王星”。北の界王のもとで修業を積んでいた死んだ仲間たちが、界王星を襲ってきた“ある一団”と激しい戦いを繰り広げることとなる。
それが、フリーザの配下として活躍した「ギニュー特戦隊」だ。彼らは突如、界王星に襲来し、修業をしていたZ戦士たちと激突。ヤムチャがリクームを、分身した天津飯がバータとジースを、そして餃子(チャオズ)がグルドを相手にするというまさかの対決が、アニメにて描かれることとなった。
原作でも高い戦闘力を披露していただけに、ギニュー特戦隊の圧勝……かと思いきや、なんと結果はまったくの逆。修業によって力をつけたZ戦士が、見事に特戦隊の面々を返り討ちにしてしまうのだ。
Z戦士が界王星で修業をおこなう模様は原作漫画の扉絵の一コマでも描かれていたが、その凄まじいパワーアップっぷりに驚愕してしまった視聴者も多いのではないだろうか。
■その強烈な描写の数々に作者も困惑?…『鋼の錬金術師』
“アニオリ展開”のなかには、視聴者にトラウマ級のインパクトを与えた強烈なエピソードも存在する。なかでも荒川弘さんの大人気ダークファンタジー漫画『鋼の錬金術師』の2003年版のアニメでは、とあるキャラクターのあまりにも悲痛な“その後”が描かれ物議を醸した。
それが、リオールの町で出会うこととなる少女・ロゼだ。作中の新興宗教、レト教の信者として登場する彼女は、アニメ版では多少容姿の変更があったものの、基本的には原作同様の明るい少女として描かれていた。
主人公のエドワード・エルリックたちは「合成獣(キメラ)」に変えられたロゼの恋人を撃破。そして旅立つエルリック兄弟をロゼが送り出すのだが、彼女はその後、変わり果てた姿でまさかの再登場を果たすこととなる。
実はロゼは軍部に連行されて暴行を受け、そのショックから声を失い、喋れなくなってしまっていた。しかも父親がわからない赤子を抱いており、かつての快活さは微塵も感じられない。
アニメ化にあたり設定が変更されたキャラクターは多数いるものの、この数々の“負”の描写は原作ファンに大きなショックを与えた。この展開には原作者の荒川さんも「私が目指す少年マンガにおける娯楽の範囲から逸脱していた」とコメントしており、これがいかに衝撃的な展開だったのかを物語っている。
あまりの衝撃的な展開に、ファンの間ではトラウマ級のアニオリエピソードとして語り継がれることとなった。