悪役にもさまざまなタイプがいるが、中でも圧倒的な「理不尽さ」を見せつけるキャラは読者に強い印象を残す。最近の例で言うと、『鬼滅の刃』の悪役・鬼舞辻無惨の「パワハラ会議」に戦慄した人も多いのではないだろうか。部下である下弦の鬼5人を呼び出し、詰問し、挙句皆殺しにするあのシーンは、かなりの衝撃だった。
もちろん他の作品にも、無惨のように「パワハラがひどすぎる…」と読者を戦慄させたキャラがたびたび登場する。そこで今回は、そんな悪のカリスマが見せた理不尽さを紹介していこう。
■高圧的な態度が怖すぎた『BLEACH』ユーハバッハ
最初に紹介するのは、『BLEACH』のラスボスであるユーハバッハだ。滅却師の始祖として圧倒的な力を持っている彼は、恐怖で部下を支配し、必要ないと判断すれば容赦なく切り捨てる冷徹な男である。
その一面が際立ったのが、破面の報告会のシーンだ。そこで瀞霊廷を襲撃したリューダースと一護を襲撃したイーバーンは、軽い言い争いを始めてしまう。
するとユーハバッハは「止めろ」という言葉とともに、リューダースの腕を切り落としたのだ。続けて「私は争いを好まんぞ」と言い、この穏やかながらも高圧的な言動で一気に緊張感が高まっていく。もはや選択を一つ間違えると、死につながってしまいかねない異様な状況だ。
極めつけは、リューダースの報告を聞いた時である。彼が戦いの準備が整うのは5日後という推測を口にすると、ユーハバッハは「未来だな」とポツリと一言。「今 私の前に居るお前は預言者か?」と詰問をはじめ、見る見るうちに雲行きが怪しくなり、「私は “今”の話が聞きたい」とリューダースを一瞬で殺してしまうのだ。ここまでくるとあまりにも理不尽過ぎて、言葉を失ってしまう。
さらに、それを見て怯えるイーバーンに向かって、「お前には特に賞すべき点も罰すべき点も無い」と言い放つ。同時に一護の足止めに関しても一定の評価をされ、「は… あ… ありがとうございます!!」と動揺しながらも反応するイーバーンだが、結局、ユーハバッハは彼と不必要と判断してあっさり殺すのだった。
アニメ化では、この高圧的な対応、詰め方、豹変の仕方、部下を試すような質問の仕方が凄まじく、ユーハバッハ役の菅生隆之さんの演技が光っている。絶対あの場にはいたくないと思わされる、ド迫力のパワハラシーンだった……。
■全裸の初登場が衝撃的…『北斗の拳』シン
「力こそが正義」という信念で知られる『北斗の拳』のシン。整った顔立ちとユリアへの執着心が強い印象を残した、ケンシロウの前に立ちはだかる宿敵の一人だ。そんなシンによるパワハラの犠牲になったのは、彼が率いる「KING」に所属する手下たちだった。
シンはケンシロウを倒すため、手下たちを使って様々な攻撃を仕掛けていた。しかし、ケンシロウの強さを前に逃げ出した一部の手下がシンに報告をする際、彼はいろいろな意味で信じがたい行動に出る。
シンは全裸で美女二人の腰を抱きながら、手下二人の話を聞く。この時点で衝撃だが、彼のトンデモ行動はそれだけでは済まない。逃げてきたという手下の前に全裸+マント姿で立ったかと思うと、「た…たすけて」と懇願する手下を無表情に見下ろすのだ。圧が半端ではない。
その後何のためらいもなく、しかも冷酷な笑みを浮かべて手下の胸を貫いたシン。血で汚れた両手は先ほどの美女に当然のように拭かせており、こうしたおこないが日常茶飯事であることがうかがえる。
彼はこの衝撃的過ぎる初登場で読者に強烈な印象を残してしまった。今ではジャギに唆され、純粋ゆえに暴走した哀しく健気なキャラと認識されるようになっているが、それだけに初登場時、こんなぶっ飛んだことをしていたのには驚かされてしまう。