■残虐な言動にドン引きした『HUNTER×HUNTER』ゲンスルー

 最後に紹介するのは『HUNTER×HUNTER』のゲンスルーだ。ゲームをモチーフにした「グリードアイランド編」では、プレイヤー同士が手を組んでおり、数あるチームの中で後に一大勢力となったのが「ハメ組」である。そのメンバーであるゲンスルーには、プレイヤーを殺して回る危険な存在・爆弾魔「ボマー」という裏の顔があった。

 ゲンスルーが本性を見せるのは、ゲームクリア目前の全体会議でのことだ。長年の努力がようやく結ばれ、お互いを労い合うメンバーたち……。そんな和気あいあいとした雰囲気の中ゲンスルーは、突然「オレは『爆弾魔(ボマー)』だ」と衝撃発言をしてみせる。

 突然の告白を受け入れられず、ざわめく一同。仲間の中にとんでもなく危険な人物がいると突然発覚したのだから、当然の反応である。

 しかし状況を落ち着いて整理する間もなく、ゲンスルーは皆の前で自分を攻撃してきた仲間のひとりの顔を吹き飛ばし、恐怖を植え付けることで戦意を喪失させ、周りを自分のペースに巻き込んだ。その後、自身の能力を説明し、それを発動条件にメンバーの体に仕掛けた爆弾が起動し始める。

 こうした心理戦に長けているのが、ゲンスルーという男だ。彼の思惑通り、メンバーが徐々に言いなりになっていく様子も恐ろしい。

 その後、彼は本当の仲間2人とともに行動し、傍若無人な態度は加速していく。集めたカードを脅し取り、素直に出さない場合には暴力をふるう。交渉中に駆け引きをしようとしたプーハットの首を吹っ飛ばし、ビニール袋に入れて仲間たちに渡す残虐性には鳥肌が立ってしまった。

 おまけに相手が言われた通りにしたとしても、爆弾を作動させて「解放してやったぜ… くくくくく 恐怖からな」などと言い出すのだから、もうどうしようもない……。

 

 悪のカリスマ性を持つキャラは、いつの時代も読者を惹きつける。とはいえその言動があまりにも理不尽すぎると、見ているこちらとしてもドン引きしてしまうものだ。しかし、そうやって部下を恐怖で支配することもまた、悪役に欠かせない素質のひとつなのかもしれない……。

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