『パーマン』や『ドラえもん』、『キテレツ大百科』など、数々の名作漫画を世に送り出してきた藤子・F・不二雄さん。味のあるストーリー性はもちろんのこと、唯一無二の個性的なキャラクターたちが活躍するのも、これらの作品の人気の理由だろう。
主人公たちを含め、誰しもが知る有名キャラの陰に隠れてしまいがちだが、なかにはその意外な経歴や能力で読者を驚かせた「ハイスペックキャラ」も登場している。
今回は「藤子・F・不二雄」作品に登場する、とんでもない能力を持ったサブキャラたちについて見ていこう。
■小学生でありながら…その商才の凄さに脱帽? 『パーマン』大山法善
“正義のヒーロー”となった小学生を主人公に、シリアスとギャグを織り交ぜた独特のストーリーが展開される作品といえば、『週刊少年サンデー』(小学館)や学年別学習雑誌で連載された『パーマン』である。
主人公・須羽ミツ夫と同様、作中ではヒーローの力を授かった仲間たちが登場するが、なかでもその意外な経歴で読者を驚かせたのが、“パーやん”ことパーマン4号として活躍する大山法善だ。
彼は長い歴史を持つ大阪の寺・金福寺の一人息子で、恰幅の良い体形と関西弁が特徴的な小学6年生である。その見た目からパワータイプのキャラクターかと思われがちだが、実はメンバーのなかでもかなり知恵が働く人物で、チームの“司令塔”として活躍する場面も多い。
これだけでも実に意外(!?)だが、彼はヒーローとしての力と持ち前の頭脳をビジネスにまで活用。なんと「パーやん運送」なる運送業の会社を立ち上げ、ヒーローとして活動しながら“副業”で資金を稼ぐことに成功しているのだ。
“飛行能力”を運送に活用するだけでなく、コンピューターまでも利用し配達ルートを最適化するなど、随所でその“商才”を発揮するパーやん……。しかもこの会社の儲けを元手に、いずれは「パーやん貿易」という会社を設立し、世界を相手にした商売を目論んでいるというのだから驚きだ。
能力を活用しビジネスを成功させる手腕にしたたかな人生設計……思わず「本当に小学生?」と疑ってしまいたくなるほど、凄まじい商才を持つキャラクターだ。
■美人な彼女と高学歴を手に入れた秘かな勝ち組…『キテレツ大百科』苅野勉三
“SF”の要素を取り入れた作品も多い藤子・F・不二雄作品だが、なかでも発明好きの少年が繰り広げる奇想天外な活躍を描いた作品といえば、『こどもの光』(家の光協会)で1974年から連載された『キテレツ大百科』だろう。
主人公の小学生、“キテレツ”こと木手英一の作り上げるさまざまな“発明品”が巻き起こす騒動を描いたコメディ作品なのだが、作中、意外なハイスペックぶりを披露したのが、苅野勉三である。
彼は木手家の隣人として登場する浪人生で、キテレツたちからは“勉三さん”の呼称で親しまれている存在だ。見た目は牛乳瓶の底のような丸眼鏡に学生服、東北訛りの喋り方が特徴的な実にユニークなキャラクターである。
作中ではどこか冴えない立ち回りが多い勉三だが、実は彼、上原君子(アニメ版では上原友紀)という美人な彼女がいる。その情けない見た目とは裏腹に、かなり羨ましい背景を持っているのだ。漫画版とアニメ版では経緯は異なるが、最終的に彼女は勉三の誠実な人柄に触れたことが決め手となり、親しい仲へと発展している。
また、アニメ版では最終的に六浪の末に「高尾大学経済学部」に合格し、長きにわたった浪人生活から脱出。六浪こそしたものの、勉三は志望校を見事に勝ち取ってみせた。
どこかひ弱で“ガリ勉”な見た目を裏切る、素晴らしい人間性を見せつけたキャラクターだろう。