■親子関係・裏サイトなど現実的な問題を取り上げた「第8シリーズ」の高畑充希さん
最後は、2007年放送の「第8シリーズ」から。このシーズンは、脚本家が長きにわたって『金八先生』を支えてきた小山内美江子さんから、清水有生さんへと替わった作品で、作風も少し変わっている。
過去に描かれたディープなテーマと比べるとインパクトに欠けるが、“親子”をベースに中学生が抱えるリアルな悩みを丁寧に拾っていき、全員にスポットライトが当てられた作品だ。
生徒役の中でも際立っていたのは、田口彩華を演じた高畑充希さんである。頭が良くて誠実な彼女のテーマは、恋愛と進路。見せ場はやはり、彼氏の松井宏樹との駆け落ちだろう。
彼と同じレベルの低い高校を受験すると言い、親から猛反発を受ける彩華。一方の宏樹は進路のことで父親と揉め、突き飛ばして気絶させてしまう。気が動転した彼は彩華に連絡を入れ、一緒に逃げようと2人で逗子にある田口家の別荘に向かった。
関係を認めてもらうまで帰らないと言う彩華に対し、父が無事だったことに安堵し帰ろうと言う宏樹。考え方のずれからすれ違い、宏樹は1人で帰ってしまう。
その後、2人が肉体関係を持ったと宏樹自らがデマを流していることを知り、ショックを受けた彩華は転校も考える。しかし、金八先生に逃げない強さを教えられ、彼氏と決別し自分の学力にあった進学校を目指すことを決意するのだった。
こういった役柄は演技力の高さが問われるが、高畑さんは情感たっぷりに彩華を演じ切った。のちにテレビ番組『ぽかぽか』に出演した武田鉄矢さんも、歴代の生徒役の中で“当時と今で最もギャップを感じる俳優”という質問に高畑さんの名を挙げ、「高畑さんはやっぱり、その当時からもうすでに一枚上行ってました」と称賛していた。
ほかにも「第8シリーズ」には、女優デビューを果たした帰国子女・金井亮子役の忽那汐里さんや、金八先生の家に泊まり金八淫行疑惑の引き金にもなった森月美香役の草刈麻有さんなども出演。注目の女優が目白押しのシリーズだった。
ゆうに200人を超える生徒役俳優を排出し、2011年放送の 『3年B組金八先生ファイナル「最後の贈る言葉」』で堂々の完結を迎えた『金八シリーズ』。続編はなくとも、何らかの形で再び視聴するチャンスがあれば嬉しいものだ。