■羂索が母で宿儺の片割れが父!?虎杖の両親について

 主人公である虎杖悠仁の出生についても、伏線として考察できる余地が多分に残されている。

 虎杖本人は当初から人間離れした身体能力を有し、宿儺の指を取り込んでも自我を失わない「千年生まれてこなかった逸材」でもあるなど、特別な出自であるのは明白だった。

 そうなると気になるのが、彼の両親についてだ。祖父であり実質的な育ての父である倭助は、亡くなる直前に「オマエの!両親の!ことだが!」と言いかけて、虎杖が興味が無いと遮ったために内容は語られなかった。

 両親の名前については判明しており、母は香織、父は仁。このうち、香織は結婚後に一度亡くなったのだが、その後仁は全く同じ姿の女性と何事もなかったように生活している。女性には額に縫い目があり、その正体は本編で夏油の身体を乗っ取って暗躍していた黒幕、羂索だった。

 仁は香織との間に子供をもうけられなかったとも判明しており、虎杖は羂索が操っている体から生まれたことになる。すなわち、主人公が全ての黒幕の子どもだったというわけだ。

 そして父親の仁については、第257話にて真相の一端が明らかになる。彼の魂は、生前の宿儺が腹の中で喰らった片割れと同質のものであり、それが虎杖の父として転生したのだ。これらの事実から、虎杖は黒幕たる羂索と宿儺の片割れの転生者との間に生まれた子だとわかる。

 もし羂索が仁の正体を宿儺の片割れの転生者だと見抜いていたなら、香織の体を乗っ取ったのも納得できそうだ。なにせ昔は加茂憲倫の体を操って「呪胎九相図」を作り出したのだから。

 しかし、まだ謎は残っている。香織は一度亡くなったと倭助の口から明らかにされているが、死因などは不明のまま。仁が香織の死後、額の縫い目以外外見がそのままの彼女と普通に過ごしていた理由も不明だ。

 仁は香織を失った事実を受け入れられず、愛する女性が蘇ったことにしか目が行っていなかったのか?あるいは羂索が操っていると感づいた上で受け入れていたのだろうか?

 可能性としては、羂索が仁との間の子供をもうけるべく生前の香織を殺害したという線もあるし、虎杖に父親の記憶がほぼないことから仁の末路も羂索が関与しているかもしれない。いずれにせよ、虎杖の出生があらかじめ仕込まれていたことだけは確かだ。

 

 全271話にて完結した『呪術廻戦』。宿儺と虎杖らとの戦いの結末こそ描かれたものの、回収されないままちりばめられた伏線や謎は多く残っている。いずれどこかで明かされる日が来ることを期待したいものだ。

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