■どうしても息子を信じたい父の驚愕の行動「絶対に死なない老人ホーム」
最後は、2003年放送の第3シリーズである『TRICK-Troisieme partie-』から、第5話、第6話「絶対死なない老人ホーム」を紹介する。
入居すると絶対に死なないと言われる老人ホーム「魯人老人ホーム」。“先生”と呼ばれる赤地洋司(高嶋政伸)が「戻れ 戻れ 元に戻れ」と唱えると、飲みかけのビールや壊れた置物、さらには死んだ人間さえも生き返らせてしまうのだ。
しかしその真相は、この老人ホーム全部が大きな作り物だったというものだった。入居している老人も、面会時間にだけ集まるアルバイトたちである。このまやかしの老人ホームと契約している家庭はすべてが金持ちで、家族の死を隠ぺいし、莫大な相続税を逃れるための施設だったのだ。そして謎解きの経緯から、洋司が実の父を殺そうとしていた過去も明らかになる。
そんな過去を受け入れることができない洋司の父・茂蔵は、猟銃で自分の胸を撃ち抜いた。生き返らせてもらうことで息子の力は本物であることを証明し、自分を殺そうとした過去などなかったとしたかったのだ。
しかし、そこまでした父に対して洋司は「無理ですよ この人たちの言っていることは本当です 僕にはそんな力はない インチキですから」と言い捨て、絶望のなかで死んでいく父の姿をただ眺めていた。この時の、洋司を演じる高嶋さんの感情のない目が忘れられない……。
今回はドラマ『TRICK』のトラウマエピソードを紹介してきた。いずれも、仲間さんと阿部さんの名物コンビが犯人のトリックをしっかり暴く、見応え十分のエピソードだ。だが、せっかく真相に辿りついてもさらに犠牲者が出てしまい、最終的に誰も救われないという非常に後味の悪い最悪な結末を迎えていたのが印象的だ。
当時リアルタイムで放送を見ていた筆者も、いまだに記憶に残っている。