人気ドラマシリーズ『TRICK』。2000年から始まった本シリーズは、仲間由紀恵さん演じる自称天才マジシャン・山田奈緒子と、阿部寛さん演じる物理学教授・上田次郎のコンビが、超常現象や奇怪な事件に隠されたトリックを解決していく平成を代表するミステリーシリーズだ。本作はキャラクターたちの織りなすテンポの良いコミカルな展開が魅力なのだが、その反面、事件を解決しても誰も救われないという憂鬱な回も非常に多かった。
そこで今回は、そのドラマ『TRICK』シリーズの中でも、後味が悪すぎたトラウマエピソードを振り返っていく。
■完全犯罪成立?勝ち誇ったように去る犯人「パントマイムで人を殺す女」
まずは、記念すべきシリーズ1作目、2000年放送の『TRICK』より、第6話、第7話「パントマイムで人を殺す女」というエピソードを紹介したい。
「霊能力で人を殺すことができる」という黒坂美幸(演・佐伯日菜子さん)。彼女は、奈緒子・上田コンビが監視する目の前で人を殺すパントマイムをし、遠く離れた場所にいる人たちを次々と惨殺していく。
ベルトで首を閉めたり、ショットガンで撃ち殺したりと、演じる佐伯さんの鬼気迫る姿が印象深い。とくに2番目の殺人、パントマイムにもかかわらずナイフで刺すと血しぶきがあがり、返り血で真っ赤になりながら何度も何度もナイフで突き刺す姿は、恐ろしすぎた。
結局この犯行のトリックは、黒坂美幸と黒坂洋子という瓜二つの双子によるものだった。姉の美幸がパントマイムをしている同時刻に妹の洋子がリアルな殺人を起こし、アリバイを作っていたのだ。トリックが見破られると、妹・洋子は「すべて自分がやったこと」と姉・美幸をかばう。
ここから姉妹のかばい合いが始まると思いきや、そうではなかった。「そう 私は霊能力を信じていただけ」と、姉は全ての罪をすべて妹に被せ、さらには口封じのため毒殺する。
先に起きた3件の殺人に関しては、確かにパントマイムをしていただけであり、美幸は自分の手をいっさい汚していない。ある意味、完全犯罪を成功させてしまった。生瀬勝久さん演じるいつもは調子のいい矢部警部補も「お前みたいなやつは絶対許さん きっちりと法の裁き受けさせたる」と、怒りをあらわにしていた。
そして連行される美幸は、奈緒子に対し「あなたの求めている真実は 必ずしも白く正しいとは限らない」と言い残し、勝ち誇ったように去っていく。美幸の罪はどこまで裁けるのだろうか……。せめて妹の毒殺だけは立証してほしいものだ。
■特別な力を持つ少年、しかし真実を知り…「天罰を下す子」
2002年放送の『TRICK2』では、第8話、第9話「天罰を下す子」が、後味悪いトラウマエピソードとして有名だ。
特別な力を持つという少年の針生光太(はりう・こうた)と、それをサポートする祖母と母。少年が祈祷すると天罰によって人間が次々と死んでいく。某魔法学校の生徒のような少年の可愛いルックスと、それに見合わぬ「天罰が下るよ」と、あっけらかんに人の死を宣言する姿が非常に不気味だった。
しかし、上田によってこの事件の真相が明かされる。どうしても自分の孫に特別な力があるとしたい祖母は、なんと孫の言うお告げの裏でそれを実現させるための殺人を繰り返していたのだ。いくら愛する孫のためとはいえ、人の道から外れすぎているだろう……。
真相が明らかになると祖母は自分の罪を悔い、自殺。しかしそれでもなお、母親は自分の息子には特別な力があると言い続ける。この状況に耐え切れなくなった少年は、ついに精神に異常をきたしてしまうのだった。「天罰だ天罰だ みんな死んじゃえ」と叫び続ける少年の姿が、非常に痛ましかった。