■集中したアムロの視線からは逃れられない

 最後に、第41話「光る宇宙」にて見られたシーンを紹介しよう。

 第13独立艦隊とキシリア艦隊の戦闘が始まり、アムロはララァ・スンが搭乗するモビルアーマー(MA)・エルメスと対峙する。

 ニュータイプであるララァの感応波によって、宇宙空間を自在に飛び回る「ビット」でのオールレンジ攻撃が脅威のエルメス。その存在をいち早く察知したアムロは、無数のビットによる強襲を受けるのである。

 針の穴を通すような機体操作でビームの弾幕をかいくぐるアムロだったが、さすがに手を焼き、ビットの動きに意識を集中させるため目を閉じる。

 「見えるぞ!」と開眼し、再び動き出したアムロはもう止められない。軌道を先読みした完璧な偏差撃ちで、ビットを次々と撃ち落としていくのである。その驚愕の光景を目の当たりにしたララァも思わず苦悶の表情を浮かべ、負けじとビットの操作に意識を集中させる。

 ニュータイプ同士の感応によるララァとの会話で心を乱したアムロだったが、ビーム・ライフルこそ失うも操縦に影響を及ぼすことなく、ビーム・サーベルで周囲のビットを一掃。驚異的な空間把握能力でアムロが破壊したビットは、描写されている限りでも12基に昇っていた。

 オールレンジ兵器をもってしてもガンダム本体への被弾は一発もなく、戦果だけ見ればジオンの主力MAを撃墜という結果に至った。ガンダムという機体の凄さはもちろん、アムロというパイロットがいかに驚異的な存在であるかを知らしめたシーンである。

 

 視聴者からしてみれば主人公としてヒーロー的に見えるアムロの活躍だが、あっさりと撃破されてしまったキャラクターたちにも当たり前に家族がいるのだと少し冷静な視点で見てみると、その無双ぶりには残酷さや恐怖すら感じてしまう。

 リアルな戦場の様子を描写した『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』では、そんな“白い悪魔”がいかに悪魔的に描かれるのかも注目のポイントの一つである。

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