■熱すぎるけれど泣ける…ラストのマラソンシーン
平成時代を代表するホームドラマとして名高い『ひとつ屋根の下』。最終回「上を向いて歩こう」では、やはりあんちゃんが中心となって柏木家が大団円を迎えるシーンが感動的だった。
もともとあんちゃんには、足の故障を機にマラソンランナーを引退した過去があった。ストーリー終盤は小梅が暴漢に襲われ、その問題が原因で家族はバラバラになってしまう。
家族の気持ちを1つにするため、一念発起してマラソン大会に出場するあんちゃん。ケガを抱えた足では完走すら危ういものの、足を引きずりながらゴールを目指し奮闘するのだ。
きょうだいたちは自分自身のおこないや考えを振り返りつつ、そんなあんちゃんを必死で応援する。最後はボロボロになってゴールしたあんちゃんをみんなで出迎え、涙するのであった。
ケガを抱えた元ランナーが、家族のためにもう一度フィールドに立つという設定はベタな展開に思えるかもしれない。しかし『ひとつ屋根の下』では、そのテーマが全く違和感なく描かれていた。江口さん演じるあんちゃんの熱いセリフや行動も、彼のキャラクターに完璧にマッチしており、視聴者に自然に受け入れられた。
また江口さんをはじめとする役者陣が、まるで本物の柏木家のきょうだいであるかのようにそれぞれの役を情熱的に演じたのも大きかっただろう。その結果このドラマは、多くの人の心を動かす忘れられない感動的な名作となったのだ。
江口さん演じるあんちゃんは、時に情にもろく、喧嘩っぱやい一面もあった。しかしそのようなキャラクターは、昭和を中心に多くの映画が制作された『男はつらいよ』の“寅さん”にどこか通じるものを感じる。
平成の寅さんのような活躍を見せてくれた『ひとつ屋根の下』のあんちゃん。その熱き言動は多くの視聴者の心を掴み、感涙とともにフジテレビドラマ最高視聴率を叩き出したのだ。