そこに愛があった…90年代ドラマ『ひとつ屋根の下』視聴者を号泣させた「あんちゃんが熱すぎる」名場面の画像
『ひとつ屋根の下』コンプリートDVD BOX(ポニーキャニオン)

 数々の名作ドラマが生まれた1990年代。そのなかでも、1993年にフジテレビ系列で放送された『ひとつ屋根の下』は、最高視聴率37.8%を記録した伝説的ドラマだ。この記録はフジテレビドラマの歴代最高であり、30年が経つ今でも破られていない。

 『ひとつ屋根の下』は、それぞれに悩みを抱える柏木家の6きょうだいが、紆余曲折を経て1つの屋根の下で共に暮らし始めるホームドラマである。この国民的ドラマを支えたのは、主役である「あんちゃん」こと柏木達也を演じた江口洋介さんの熱い演技だろう。

 当時、あんちゃんのセリフや行動に感動し、涙を流した視聴者は多かったはず。そこで今回は、あんちゃんの熱さに心を打たれた名シーンを振り返ってみたい。

■車椅子の弟のために…一家が団結するシーンに感涙

 まずは、四男・文也のために、あんちゃんが奮闘するシーンだ。その前に、柏木家の家族構成と、それを演じた俳優陣を紹介しよう。

 長男・達也を演じたのは、前述した通り江口洋介さん。そして次男の雅也、通称「チィ兄ちゃん」を演じたのは福山雅治さんだ。さらに、長女・小雪役には酒井法子さん、三男・和也はいしだ壱成さん、次女・小梅を演じたのは大路恵美さん、そして四男・文也を演じたのは山本耕史さんと、そうそうたる顔ぶれが揃っている。

 第5話「車椅子の弟へ」では、言葉を話さず引きこもりがちだった文也を心配したあんちゃんが、普通科の学校へ入学できるよう奮闘する。

 事故で半身不随となってしまい、一生涯、車椅子生活を余儀なくされた文也。そんな絶望を抱え、自分の殻に閉じ籠もる文也に対し、「ひとりじゃなんにもできねえのか」「黙ってりゃ 誰かが代わりに何かをしてくれると思ってるのか」「てめえはそれでも男か!」と、あえて厳しい言葉をかけるあんちゃん。さらに、掴みかかってきた文也を突き飛ばす。

 このあまりにひどい言動に、きょうだいたちは怒りを向ける。しかし、そんなあんちゃんの心の内は、文也を“家の中にいるのではなく友達の輪のなかに入れてやりたい”、というものだった。さらに「できることならこの足と取り替えてやりたい」と、涙をボロボロ流しながら語るのだ。このきょうだい想いのあんちゃんの姿に胸を打たれた視聴者は多いだろう。

 その後、あんちゃんをはじめとした柏木家きょうだいは、文也を学校に入れてもらえるよう、校門で署名集めを始める。最初は生きることに対して投げやりだった文也だが、きょうだいの行動や努力に触発され、前向きに生きる決心をするのである。

 当時はまだ障害を持つ人に対し、社会の分断が大きかったように感じる。この回は、あんちゃんの行動を通じ、障害を持つ人とのかかわり方なども考えさせられたエピソードであった。

■「これで血はつながった」熱いあんちゃんのセリフに涙する輸血シーン

 あんちゃんが小雪に輸血をするシーンが視聴者の涙を誘った、第9話「そこには愛がある」の回も印象的だった。

 6人きょうだいのうち、実は長女の小雪だけ血がつながっていないことが発覚する。小雪は幼い頃に何度も手紙をくれた実の母親のもとを訪れるが、母は自分の娘であることに気づかなかった。そのような経緯もあり、小雪は疲れて貧血を起こしてしまう。

 そんな小雪に対し、自分の血を輸血して助けるあんちゃん。隣のベットに横たわる小雪に、「あんちゃんの血は温かいか? そこには思いっきり愛があるからな」、「もうこれで血が繋がってないとか言うな」と、熱く優しいメッセージを伝えるのであった。

 小雪は自分だけ血のつながらない家族のなかで孤独を感じていたのだろう。しかし大切な家族というのはそれだけではない。あんちゃんが言う「そこには愛があるからな」というセリフが、すべてを物語っている。

 ちなみにこの「そこに愛はあるのかい」というあんちゃんのセリフは、ドラマを通し、随所に登場する本作を代表するセリフだ。ここぞという場面にインパクトを残したこのセリフは当時の流行語にもなっており、多くの視聴者の心に深く刻まれた。

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