■エゴの形を変えられるか?『アオアシ』エスペリオンの司令塔・桐木曜一
『ブルーロック』をはじめ、エゴイストと言えば点取り屋であるFWをイメージする人も多いだろう。しかし小林有吾氏の『アオアシ』に登場する桐木曜一は、中盤司令塔となるMFのエゴイストだ。
桐木は年代別の日本代表にも選出されるほどの実力者。主人公・青井葦人も所属する東京シティ・エスペリオンユースのなかでは、栗林晴久と同じく群を抜いた存在だ。しかし桐木は、Uー18日本代表に招集されなかったことで焦りと苛立ちを募らせ始める。
プレミアリーグ・東京VANS戦。司令塔として出場した桐木は“代表レベルなら反応できるんだよ”と言わんばかりの鋭いパスを味方FWたちに出す。そして、そのパスに反応できなかったことを理由に彼らを早々に切り捨て、それからは自身の個人技に固執するようになるのだ。
ハーフタイム観戦にきていた栗林に刺激され、後半に入るとFWにパスを供給しはじめる桐木だったが、あくまでパスの質は落とさない。供給され続けるパスに、次第に仲間たちも反応できるようになっていく。そして、そこに桐木がパスにバックスピンをかけFWにつなげ、ついに得点に至った。
途中放った福田監督の「さあ桐木、エゴの形を変えられるか?」という言葉が象徴するように、桐木は自身のエゴを貫き通しつつも、エゴそのものの形を変え、チームを勝利させたのだった。
今回はサッカー漫画で「エゴイスト」だったキャラクターたちを紹介してきた。彼らはそれぞれが自分だけの信念を持ち、チームプレーを超えて個の力を追い求める姿が印象的だった。
エゴを出すあまり相手選手、ときには味方選手をも置き去りにするようなプレーも見られたが、しかしそれは勝利への執念、さらにはサッカーへの愛から来るもので、そのエゴが彼らを特別な選手へとしていたのは間違いない。