昭和オマージュと令和的ドラマ性…『ウルトラマンアーク』が大人の視聴者を満足させる理由  『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンコスモス』との意外な共通点も…の画像
『ウルトラマンアーク』メインビジュアル (C)円谷プロ (C)ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京

 2024年7月より放送している『ウルトラマン』シリーズ最新作『ウルトラマンアーク』(テレビ東京系)。『ウルトラマンギンガ』(2013年放送)から始まった「ニュージェネレーション・ウルトラマン」シリーズも、本作で12作目となる。

 これまでの作品においても新機軸を打ち立ててきた同シリーズだが、こと『ウルトラマンアーク』に関しては新要素とノスタルジーのハイブリッドともいえる作品となっている。

■実験的なカメラワークと海外ドラマのような展開

『ウルトラマンアーク』は、16年前に起こった「K-DAY」と呼ばれる怪獣の同時発生事件以降、怪獣災害が日常化している世界を舞台としている。

 怪獣災害によって両親を亡くした飛世ユウマ(演:戸塚有輝)は新人調査員として、日夜、怪獣調査に奔走しているが、彼には大きな力があった。それは、想像力を解き放つことで光の使者「ルティオン」と一体化し、光の巨人「ウルトラマンアーク」として戦う力である。

 前作『ウルトラマンブレーザー』(2023年/テレビ東京系)は、斬新なイメージがありながらも、実は「ウルトラマン」の本質を踏襲した王道のストーリー展開だった。対して、本作『ウルトラマンアーク』は、新鮮味あふれる見せ方を徹底した実験的作品のように感じる。

 まず、その見せ方として挙げられるのが、カメラワークだ。

 第1話「未来へ駆ける円弧」における鎧甲殻獣シャゴンとアークの戦闘シーンは、地球防衛隊の石堂シュウ(演:金田昇)のスマホカメラから長回し風に映し出される。これにより、まるで視聴者は実際の事件現場で傍観しているかのような錯覚に陥り、より深い没入感を生み出すことに成功しているのだ。

 そのほかにも第2話「伝説は森の中に」では、視聴者自身が怪獣やウルトラマンと戦っているかのような視点で映し出される。全体的に特撮における新たな視点からの撮影を試みているようにも感じられ、毎話新鮮な画角や構図が際立つ作品に仕上がっている。

 また「ニュージェネレーション・ウルトラマン」では定番の、変身後に変身者がいる特殊空間「インナースペース」が排除され、『ウルトラマン』シリーズではあまり見ることができない水中での変身シーンなどが存在する。

 もうひとつの興味深い見せ方の要素は、ストーリーテリングだ。

 これまでの『ウルトラマン』シリーズであれば、第1話の時点でオリジン、つまり主人公がいかにしてウルトラマンになったのかを描くのが通例だ。しかし本作では、第3話「想像力を解き放て!」にて真実を明らかにしている。

 パイロット版である第1話で、作品の概要や全体像を大まかに見せるのは、海外ドラマなどでよく見られるアプローチである。物語に連続性を持たせる役割を果たしており、作品に厚みと奥深さを出すことに成功した手法といえるだろう。

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