■『帰ってきたウルトラマン』を想起するポイント
ここからは『ウルトラマンアーク』に見られる「ノスタルジー」にフォーカスしてみよう。
まず何といってもタイトル画面の背景だ。この万華鏡のような背景は、『帰ってきたウルトラマン』(1971年/TBS系)と同様のデザイン。さらに文字のフォントも、同じように『帰ってきたウルトラマン』をほうふつさせる。
これだけでなく、本作には『帰ってきたウルトラマン』を思い起こさせる場面が随所に存在する。ウルトラマンアークのファイティングポーズはウルトラマンジャックのそれと似通っているし、第2話でマンション建設予定地の工事現場から古代怪獣リオドが現れる展開は、さながら『帰ってきたウルトラマン』に登場する古代怪獣ツインテールのようである。
ファンの間でさまざまな憶測が飛び交っているが、今後『帰ってきたウルトラマン』との何らかの関連性がハッキリするのかも注目ポイントだ。
『帰ってきたウルトラマン』だけでなく、劇中には『ウルトラマンコスモス』(2001年/TBS系)の小ネタが散りばめられているのも興味深い。怪獣保護に注力しようとするなかで、宇宙から飛来した生物が怪獣に寄生し、面倒な事態へと発展する展開もそのひとつ。
第4話「ただいま怪獣追跡チュウ」に登場する商店街の店舗には『ウルトラマンコスモス』ファンには見覚えのある名前などがつけられており、こちらも見逃せない。
ウルトラマンアークがきっちり3分間で戦闘を終える描写も、近年の「ニュージェネレーション・ウルトラマン」では、うやむやになっていた設定を明確なものにしている。
昭和のウルトラマンは「それは反則だろ」といいたくなるような技を次から次へと繰り出して敵をなぎ倒してきたが、ウルトラマンアークも想像力を駆使して臨機応変に対処する。想像力さえあれば、技の数は無限大ということだ。
そのほか第10話「遠くの君へ」は、昭和のウルトラマンでは比較的よく見られた宇宙人と人間との友好的な関係性をメインに据えたエピソードとなっており、新しさのなかに懐かしさが混在した魅力を放っていた。
正直、近年の特撮作品はヒーローの出番を多くすることで尺を稼いでいる印象が強かったが、『ウルトラマンアーク』にはそういった印象が一切ない。
AIやデジタル通貨といった現代社会に鋭く切り込んだエピソードも存在しており、一話一話のドラマ性がしっかりしているため、大人にも十二分に楽しめる魅力にあふれているのだ。
製作陣が目指しているであろう「まったく新しいウルトラマン」は、まさに新要素とノスタルジーのハイブリッドだ。ウルトラマン離れしていた視聴者も、久しぶりにカムバックしてみてはいかがだろうか。