■“月9”定番の恋愛モノではなく、男の友情がテーマ

 『ビーチボーイズ』は、フジテレビの“月9”枠で放送されたドラマである。それまでの“月9”といえばラブストーリーが中心であったが、本作はそれとは異なる。広末さん演じる真琴の揺れ動く恋心は少し描かれているものの、本作はあくまで男の友情をテーマにした物語だった。

 通常イケメン2人が登場するドラマでは、1人の女性を巡って2人が対立するケースが多い。しかし本作は、大人の男性が抱える生きづらさや葛藤、そして大人が夢を持つことや、男同士の友情などを丁寧に描写している。

 男性2人(しかもイケメン)の友情を描いた作品というのは当時珍しく、それぞれが抱える生い立ちなども絡ませた友情物語は見ていて心地良かった。

 また再放送を見返すと、第1話のストーリーがとてもゆっくり進行し、今のドラマに多い劇的な展開には至らない。あくまで夏の空を漂う大きな夏雲のような雰囲気があり、一見無駄に見えるようなシーンでも視聴者を没入させる力があるのだ。

 1997年はまだスマートフォンが存在しない時代であった。それもあってか、若者が海辺で楽しく過ごすにはビーチバレーをしたりバーベキューを楽しんだりと、全身で夏の海を満喫する姿が描かれている。その様子は見ていて心地良く、視聴者が“夏”を思い切り味わうことができるのも、このドラマの醍醐味であった。

 

 現在再放送されている『ビーチボーイズ』を見返すと、登場人物の多くが小麦色に日焼けをし、高校生がルーズソックスを履いているなど90年代の社会を振り返ることができるシーンも多い。また1話見るだけでも話の概要が分かり、良い意味で今後どのような展開になっていくのか予想できるのも魅力なのだ。

 『ビーチボーイズ』は、ノスタルジックな要素を持ちながらも普遍的なテーマを扱っているため、時代を超えて多くの人が楽しめる夏ドラマである。この機会に見返してみてはいかがだろうか。

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