「ジャンプ黄金期」と呼ばれた1980年代、『週刊少年ジャンプ』(集英社)が発売される月曜日が毎週待ち遠しかった。連載されていた『キン肉マン』、『キャプテン翼』、『北斗の拳』などの名作漫画の展開に胸が躍ったものだ。
王道のバトル漫画はもちろん楽しみだったが、毎週笑わせてもらったのがギャグ漫画だ。人並み外れた規格外の主人公の登場には、大いに楽しませてもらった。
そこで、80年代『ジャンプ』の名作ギャグ漫画の主人公たちを振り返ってみよう。
■「キーン!」「んちゃ!」可愛くて規格外でも元気をくれる『Dr.スランプ』アラレちゃん
まずは、1980年から連載された鳥山明さんの『Dr.スランプ』だ。
翌年からすぐにテレビアニメ化されたほどの凄まじい人気ぶりで、主人公・則巻アラレの無邪気な可愛さや規格外の強さ、アラレの生みの親で科学博士の則巻千兵衛やガッちゃんこと則巻ガジラをはじめ、舞台であるペンギン村に登場する多彩なキャラたちなど、楽しさが溢れていた。
一応、悪役であるDr.マシリトもなんだか憎めない存在だし、宇宙海賊のニコチャン大王なんてもはや笑いでしかない。鳥山さん自身も「トリヤマ」というキャラでたびたび登場しており、ちょっと卑しい性格になっているのがまた面白い。さらに編集者の鳥嶋和彦さんが「ボツ!」と、ブラックジョークで楽しませてくれる。
さて、主人公のアラレといえば人間型ロボットなのだが、ありえないほどに強い。地面に軽くパンチするだけで、“ばかっ”と地球を割ってしまうくらいだ。これには「ウメぼし たべて スッパマン!」も、ビックリ仰天であろう。
また、アラレには走るときの「キーン!」やあいさつの「んちゃ」、不思議に思ったときなどの「ほよよ」といった独特の“アラレ語”がある。当時の少年少女がみんな真似して使っていたが、とくにアニメ化されてからは、イントネーションが統一されていったように感じる。アラレを演じていた声優の小山茉美さん、恐るべしである。
『Dr.スランプ』は1984年に連載が終了し、その後すぐに『ドラゴンボール』の連載が始まったが、まだまだ人気が続いていた。鳥山さんといえば“孫悟空”ではなく“アラレちゃん”という認識は、しばらくは共通のものであったように思う。
■何があっても明るいキャラが最高! 『ハイスクール!奇面組』の一堂零
次は、1980年から連載スタートした新沢基栄さんの『3年奇面組』と、続編の『ハイスクール!奇面組』だ。中学生編が前者で、主人公たちが高校進学するとともに後者にタイトルが変わっている。
主人公・一堂零を中心に、個性的な奇面組のメンバーが何かとお騒がせな学園ライフを満喫している様子がたまらなく魅力的だった。変なポーズを取るところや二頭身になってワチャワチャしているシーンは、小学生だった筆者にとってザ・ドリフターズを連想したものである。
リーダーである零はメンバーにボコボコにされたり、いじられたりするのだが、それもコミカルで、それでいて実は“人類最強クラスの変態”という設定がなんとも面白い。ヒロイン・河川唯との距離感もいじらしく、エクソシストのような動きも最高すぎた。
当時を思い返すと、筆者のクラスでは奇面組ナンバー2の冷越豪のほうが人気は上だったような気もするが、両者のコンビは抜群。どんなときでも突き抜けた明るさの『奇面組』は、休み明けの憂鬱な月曜日を楽しいものに変えてくれた。
ちなみに、当時、筆者の周囲によくいた眉毛を剃り落とした高校生のお兄さんたち……。“まゆなしの零”のおかげで、いささか怖さが和らいだものだ。