「キャラゲーなのに怖すぎ…」初代プレイステーションの異端ホラー『ゲゲゲの鬼太郎』の「トラウマ演出」の画像
プレイステーション『ゲゲゲの鬼太郎』(バンダイ)

 個性豊かな妖怪たちが活躍する『ゲゲゲの鬼太郎』は、漫画家・水木しげるさんの代表作であり、今もなお新たなメディア展開を続けている国民的人気作品だ。

 その高い人気からたびたびゲーム作品も作られている『ゲゲゲの鬼太郎』だが、プレイステーション(PS)でゲーム化された作品のなかには、それまでとは一風変わったテイストでプレイヤーたちを大いに驚かせたタイトルがあり、一部ファンの間では“伝説化”している。今回は、多くのファンに衝撃を与えたPS版『ゲゲゲの鬼太郎』について見ていこう。

■『ゲゲゲの鬼太郎』なのに…主人公は人間!?

 そのゲームは、『ゲゲゲの鬼太郎』というタイトルで、1997年にバンダイからリリースされた。

 それまでの作品ではプレイヤーが鬼太郎を操作し、妖怪たちと戦うというものが多かった。実はPSでは、のちに『ゲゲゲの鬼太郎 逆襲!妖魔大血戦』(コナミ/2003年)というタイトルも発売されているが、これもアクションゲームであった。

 しかし、本作の主人公は、妖怪とは無関係の「人間」だ。この主人公が、フィールドを散策し謎を解いていく“3Dアドベンチャー”作品となっている。

 プレイヤーは用意された3つのシナリオからプレイする内容を選び、ストーリーを楽しみながらそれぞれの舞台を探索していくこととなる。

 ハードの力をフル活用することによって、鬼太郎をはじめ、お馴染みの妖怪たちを3Dポリゴンで表現。さらに、それぞれのキャラをアニメ4期の声優が演じている点も原作ファンからすれば嬉しい点だろう。

 筆者も当時、本作をいわゆる「鬼太郎の“キャラゲー”」と思い、なにげなく手に取ったものだが、のちにこの作品に隠された思いがけない“恐怖”に恐れおののくこととなったのである。

■ほかの“キャラゲー”とは一線を画す、本作ならではの“恐怖”

 本作は、シナリオごとの主人公を主観視点で操作し、用意されたフィールドを探索していくこととなるのだが、なんといっても特筆すべきは各所にちりばめられた“恐怖”演出の数々だろう。

 3つのシナリオの舞台はどれもどこか薄暗く、どんよりとしたBGMが流れることも多い。主人公以外の人間もほぼ登場しないため、多くの場合、一人きりで不気味なフィールドを歩き回り、探索をおこなっていく必要があるのだ。

 加えて、本作の主人公は特殊な力を持たない“一般人”であるため、妖怪や怪異に襲われた際、抵抗する術を持ち合わせていない。こうなると取れる手段は一つで、こちらを追いかけてくる“なにか”に捕まらないよう、ひたすらに逃げ回ることしかできないのである。

 しかも、いわゆる「ライフ」のような概念も存在しないため、追跡者に捕まってしまうと即ゲームオーバー……。反撃することもできず、ただただ無力な人間として限られたフィールドを逃げ回る緊張感は、まさに本格的なホラーゲームのそれである。

 一応、各シナリオごとに鬼太郎が協力者として登場するのだが、こちらを助けてくれる場面は非常に少ない。おいてけぼりにされてしまい、より強い孤独感にさいなまれることも多いのだ。

 ポリゴンで表現された追跡者や、シナリオごとに巻き起こる怪現象の数々も実におどろおどろしく、卓越した恐怖演出の数々がトラウマとなったプレイヤーも多いのではないだろうか。

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