■『千と千尋の神隠し』では親子をモデルに?

 2001年に公開され、19年にわたって国内興行収入ランキング1位だった『千と千尋の神隠し』。個性的なキャラクターが次々登場していたが、同作にも実在の人物をモデルにしたキャラクターがいたことが鈴木敏夫さんのコラムなど、さまざまなメディアで語られている。

 まずは主人公の荻野千尋。彼女のモデルとなったのは、当時日本テレビの映画プロデューサーだった奥田誠治さんの娘である千晶さんだ。千尋と年齢も同じ10歳で、当初はそのまま「千晶」をキャラ名に考えていたのだとか。名前がそのまま出るのは良くないということで、主人公は「千尋」と変更されていった経緯がある。

 さらに千尋の父は奥田誠治さん本人がモデルで、食べ方、運転までかなり似ているそうだ。奥田さんは、宮崎監督や鈴木さんらと長年にわたって親交があり、休暇には皆で宮崎監督の山小屋に行くほど親密だった。

 奥田親子をよく見ていたからこそ、宮崎監督は「千晶の映画を作ろうか」と彼女の成長物語を描くことを思いついたのだそうだ。まさに同作は、奥田家から生まれた物語なのである。

 千尋とハクの出会いのきっかけになった「靴が川に落ちた」というエピソードも、森の中を散歩していた千晶さんの身に実際に起こった出来事だという。そのときは宮崎監督らが一緒になって靴を探したそうだが、小さなエピソードが壮大な物語のファクターになるとは、監督の創造力に脱帽である。ちなみに、靴にはセーラームーンのイラストが入っていたそうだ。

 また、奥田誠治さんは同作以外で、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』や『紅の豚』といった作品のキャラモデルにもなっている。

 彼らにリアリティがあるからこそ、あの独特の世界観が色を増していくのかもしれない。

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