冬彦さんブーム、最高視聴率34%、タイトル回収の妙…90年代大ヒットドラマ『ずっとあなたが好きだった』が視聴者の度肝を抜いた理由の画像
『ずっとあなたが好きだった』第5巻[DVD](TBSテレビ)

 どの分野においても言えることだが、誰もやったことのないことをやり遂げるのは素晴らしいことだ。筆者の独自の意見だが、ドラマ界においてそれを遂行したと思うのが、1992年に放送された『ずっとあなたが好きだった』である。

 この作品は、それまでのテレビドラマを覆すほどのセンセーショナルな内容だったが、最高視聴率34.1%を記録する大ヒット作に。そして社会現象となり、“冬彦さん”はその年の新語・流行語大賞にも選ばれた。まさに、革命的な作品だった。

 そんな『ずっとあなたが好きだった』はどのようなドラマだったのか、じっくりと振り返ってみよう。

■タイトルからは想像つかない! 予想外の展開が話題のドラマ

 『ずっとあなたが好きだった』は、1992年7月より全13回にわたり放送されたTBS系列のドラマである。ヒロインの西田美和役を賀来千香子さんが務め、彼女の結婚相手である桂田冬彦を佐野史郎さんが演じた。

 物語は、美和が父親の薦めで東大卒のエリートサラリーマンの冬彦とお見合いをするところから始まる。しかし、学生時代の恋人であった大岩洋介(布施博さん)との再会を機に、美和の心は揺れ動く。

 恋心を抱きつつも堅実な結婚を選ぶ美和。サザンオールスターズの歌う主題歌『涙のキッス』も素敵なラブソングだったし、ドラマのタイトルから想像しても、美和が洋介と淡い恋を発展させていくストーリーだと誰もが思ったであろう。しかしここからの展開は、視聴者の予想を大きく裏切るものであった。

 美和の結婚相手である冬彦は極度のマザコンであり、美和との新婚生活は悪夢のようなものだった。彼は美和にいっさい手を出さず、料理を酷評し、愛し合いたいと希望する美和を“淫乱”と罵倒する。

 物語が進むにつれて、冬彦の異常な性格がますます明らかとなり、美和は追い詰められていく。恋愛ドラマというより、ちょっとしたホラードラマのような展開になっていくのだ。

 これまでのドラマにも嫉妬心が強いといった意地悪なキャラクターは存在していたが、冬彦のエキセントリックな性格はそれをはるかに超えていた。

■冬彦さんの「んーんー!」の叫びや木馬…、佐野史郎さんの怪演はこの年の社会現象に 

『ずっとあなたが好きだった』が大ヒットした要因は、何と言っても佐野さんが怪演した冬彦の存在である。見た目はいかにもエリートサラリーマンといった風貌の冬彦だが、物語が進むにつれてその「ヤバさ」が際立っていく。

 まず、冬彦が集めるコレクションが恐ろしい。生きたまま標本にされたかのような蝶の標本が妙に光を放ち、不気味な雰囲気を醸し出している。

 さらに冬彦の家には、子どもの頃から使用されてきた木馬が置かれている。美和との関係がうまくいかないと、冬彦はその木馬にまたがり無表情でユラユラと揺れるのだ。

 また、美和の気持ちが洋介にあることを察した際には、唇を噛みしめながら「んーんー!」と唸る。そんな冬彦の異様さは、従来のドラマにはない、ヒロインの相手役として強烈な印象を残した。

 こうして「冬彦さん」はその年の顔になり、佐野さんはこのドラマをきっかけに一躍テレビに引っ張りだことなる。筆者も当時、佐野さんがロケで街を歩いていたところ、彼を見た一般人が悲鳴をあげている様子を見た記憶がある。それほど冬彦さんというキャラクターは視聴者にとって恐ろしくも強烈なインパクトを残したのだ。

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