■もう一人の地場衛の姿「月影の騎士」も癖が強い
タキシード仮面と同様、セーラー戦士のピンチに駆け付けてくれるミステリアスなイケメン「月影の騎士」。『R』全43話のうち「魔界樹編」にしか登場しないレアな人物であり、マスクで顔を隠したアラビア風の衣装と白いバラがトレードマークである。
その正体は、前作の衝撃でタキシード仮面や前世の記憶を失いながらも、セーラームーンを救いたいと想う地場衛の潜在意識が具現化された姿。つまりスタイルは違えど、タキシード仮面と同じ存在なのである。
登場回数が少ないながらも、ファンの中に強いインパクトを残したのは、彼の立ち居振る舞いがかなり個性的だったからではないだろうか。月影の騎士は、アラビア衣装をまといアラビア風BGMで登場するキャラクターにも関わらず、なぜか最後に日本の俳句を読んで去っていく。俳句は、声優を務めた古谷徹さんのアドリブから生まれたのだとか。
俳句の内容はこれまたキザなものが多いが、中には口上と合わせて見ると面白いものもある。たとえば『R』7話では、赤ちゃんの生命エネルギーを吸おうとする敵を前に、「家族団らんを楽しむべき穏やかな日曜日、魔物が暴れるのは許せぬ。赤ちゃんは可愛い。とりわけほっぺにチューしたときの笑顔はたまらん」と個人的な感想を口上として述べた。そして去り際の俳句は、「赤ちゃんを 世話してわかる 母の愛」。彼の子どもへの愛を感じる一コマだった。
芝居中の舞台に現れた敵を撃つ10話では、“乙女”へのこだわりを見せた月影の騎士。「どこの誰だか知らないけれど乙女はみんな知っている。月影の騎士見参」と懐かしい『月光仮面』のテーマソングの歌詞を模した口上で登場し、去り際には「スポットに うかぶ乙女の 美しさ」と締めている。
振り返って見ると、やはりアニメのタキシード仮面は癖が強い場面が多い。だが当時、「ピンチに駆けつけてくれる王子様」という設定は多くの少女のハートを掴んだ。しかも、戦いの起点になったりチャンスを生み出したり、セーラー戦士にバフをかけたりステッキで直接攻撃をしてくれたりと戦闘面での素晴らしい活躍もしている。
意外なギャップがあるという点も、間違いなく彼の魅力のひとつだろう。