マシンを操作し、スピーディーな駆け引きを楽しむ「レースゲーム」。時代を問わず人気のゲームジャンルだ。ファミコン時代にも数多くの名作レースゲームが登場しているが、当時の限られたスペックの中で、素晴らしいスピード感を演出した作品も少なくない。
そんな、すさまじい疾走感でプレイヤーたちを手に汗握らせた、レースゲームの傑作の数々を振り返っていこう。
■いちはやく“3D”を取り入れた意欲作『ハイウェイスター』
『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめ、数々の人気RPG作品を世に送り出してきた、スクウェア(現:スクウェア・エニックス)。実はファミコンとしては斬新な“とある機能”に対応したレースゲームを手掛けていたことをご存じだろうか。
その作品こそ、1987年に発売された『ハイウェイスター』である。高速道路でのロードレースを題材とした作品で、マシンを後方から捉えた視点を採用しており、プレイヤーは奥へと続いていくコースをドライビングテクニックで攻略していく。
特筆すべきはグラフィックだろう。疾走するマシンはもちろん、高速で移動していく背景が緻密に描かれており、レースに臨場感を与えてくれる。
とくに、コースを駆け抜けていくスピード感は抜群で、とてもファミコンとは思えないほど。ほかのマシンとぶつかった際の弾き合いなどの演出も丁寧に表現されており、まさに自身がロードレースの真っただ中にいるというリアルな緊張感まで味わえる。
これに加えて本作は、のちに発売される「ファミリーコンピューター3Dシステム」にも対応した初の作品となっている。周辺機器と組み合わせることで、この臨場感や迫力をよりいっそうリアルに体験することができるのだ。
レースゲームとして良作なのはもちろん、“3D視点”によってよりリアルなスピード感を楽しめる、時代を先取りした意欲作といえるだろう。
■“F1”の醍醐味がギュッと詰まった隙なき名作『ファミリーサーキット』
日本に空前の“F1ブーム”が到来した1987年頃。これを受け、メーカーもF1を題材にしたレースゲームを世に送り出してきた。
なかでもナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売されたF1をテーマとした名作が、1988年に登場した『ファミリーサーキット』だろう。
操作性は実にシンプル。ギアチェンジなどもなく、アクセル、ブレーキ、十字ボタンによる左右移動という簡潔な操作でレースを進めていくことができる。もっとも特徴的なのは画面構成で、本作はシューティングゲームのような見下ろし型の縦スクロールで、ひたすらコースを進む。そして、車が加速すればするほど、画面のスクロールの速度も上がっていく。
ライバルの車も登場するが、コース上でのアタリ判定はなく、車同士がぶつかってもクラッシュしない。つまり、純粋に「ライン取り」を突き詰めて、トップを目指すゲームなのだ。
操作するマシンの“セッティング”を細かく操作できるのも特徴で、ブースト圧やギア比といった計6項目を自由にカスタマイズし、オリジナルのマシン性能を実現することが可能。コースにあったセッティングをしないと、まるで勝てないこともある。
また、カラーリングもかなりのパターンが用意されており、当時、最前線で活躍していたF1マシンのカラーを再現できるのもファンにとっては嬉しい点だった。
コースも実在するサーキットを再現したものが揃っているが、なかには“大垂水峠”のようないわゆる峠道をモデルにしたものもあり、ゲームだからこその特殊な環境のレースが楽しめる。
縦スクロールのスピード感と、奥深いセッティング、そしてコースのライン取り……ファミコンでありながら、練り込まれたゲームバランスにより骨太のレース体験が味わえる作品だ。