1992年にカプコンから発売されたスーパーファミコンソフト『ストリートファイターII』は、人気絶頂だったアーケード版を家庭用ハードへ見事に移植、その完成度の高さから“格ゲーブーム”の拡大に貢献した伝説的な作品となっている。 だが、本作が登場する以前のファミコン時代にも、実は数多くの名作格闘ゲームが登場していたことをご存じだろうか。今回は、昭和キッズを夢中にさせた対戦格闘ゲームを振り返っていこう。
■シンプルでありながら奥深い駆け引きが楽しめる名作『アーバンチャンピオン』
「ファミコン」といえば任天堂から発売されたゲームハードだが、その任天堂が手掛けた“対戦格闘ゲーム”も存在する。なかでもその独特かつシンプルな仕様で子どもたちを夢中にさせたのが、1984年に発売された『アーバンチャンピオン』だろう。
本作は、ファミコンで発売された初の対戦格闘ゲームだ。プレイヤーは主人公の男性を操作し、数々の強敵を相手に“ストリートファイト”を仕掛けていく。
初期の作品ゆえ、のちに登場する“必殺技”のような概念はまだなく、今ではお決まりのようになっている“体力ゲージ”も存在しない。
本作では相手の攻撃を防ぎながらこちらのパンチを当て、いかに相手を画面端まで押し切るか……という、いわゆる“相撲”のようなルールが採用されている。シンプルなゲーム性だが、一方で対戦をするうえできちんと駆け引きが生まれるよう、さまざまな仕様が用意されているのが最大の特徴だろう。
攻撃方法は“パンチ”のみだが、速度や威力が異なる2種類が用意されており、素早く繰り出せるものは当たりやすいがノックバックがなく、一方で遅いパンチはその分威力が高く設定されている。
また防御もガード箇所を頭、ボディと切り替えられたり、ときにはあえて後退して距離を取ったりが可能。使用するボタンこそ少ないが、それでいてしっかりと奥深い“対戦格闘”を実現できるようになっているのだ。
また、いわゆる“フィールドギミック”のようなものが用意されているのも斬新な点で、背景の建物から男が投げ落としてくる植木鉢に当たってしまうとスタミナを失い、一時的に操作不能になってしまう。
シンプルだが、やればやるほどに技量が向上し、勝利できるようになっていく点は、ファミコン作品でありながら“対戦格闘ゲーム”の醍醐味をしっかりと実現している。のちに続く数々の“対戦格闘ゲーム”たちの始祖ともいえる、味わい深い一作だ。
■超人ごとの“個性”が生きる“キャラゲー”の元祖作品『キン肉マン マッスルタッグマッチ』
漫画やアニメ作品を原作とした、いわゆる“コラボ”作品は、ファンからすれば非常に魅力的だ。ファミコンでも、当時の人気作品の世界観を受け継いだゲームが多数登場している。
なかでも、ゲームでしっかりとキャラクターの“個性”を表現し、原作ファンを夢中にさせた一作と言えば、バンダイから1985年に発売された『キン肉マン マッスルタッグマッチ』だろう。
当時『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていたゆでたまご( 原作:嶋田隆司さん、作画:中井義則さん)の人気漫画を原作とした本作。バンダイが手掛けた初のファミコン用ソフトでありながら、同時に初のジャンプ作品を題材としたゲームとなっている。
いわゆる“キャラゲー”というジャンルにも該当する作品だが、それまでの対戦格闘ゲームと違い、キャラごとにはっきりとした“個性”を設定し、性能差を設けることで強みと弱みを明確化したのは実に革新的であった。
操作もシンプルでありながら原作さながらの“プロレスバトル”を再現できるようになっており、盛り上がる会場の雰囲気や臨場感あふれる効果音などが、対戦を盛り上げてくれる。登場キャラクターも当時の原作人気に準拠した面々が揃っており、ファンからしても納得のラインナップだった。
また、BGMとしてアニメ主題歌『炎のキン肉マン』のアレンジバージョンを聴くことができるのも、原作ファンにとっては嬉しい点だ。
キャラゲーとしてだけでなく、操作性や演出面でもプレイヤーを夢中にさせてしまう、実に本格的な対戦格闘ゲームといえるだろう。