■安全バーなしで繰り広げられる超高速上での殴り合い…『バキ』ジェットコースター
昨今では数多くの格闘漫画が登場しているが、いまもなお新たな物語が展開され続けている人気作といえば、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載されている板垣恵介氏の『刃牙』シリーズだろう。
主人公・範馬刃牙が数々の強敵たちと激闘していく大人気作品だが、第2部『バキ』のなかでは実に意外な場所での一戦が描かれている。
東京へと集結した“最凶死刑囚”たちとの激闘が繰り広げられるなか、死刑囚の一人・ドリアンは夜中の“遊園地”へと誘導され、そこで空手家・末堂厚と拳を交えることとなった。
圧倒的なフィジカルを生かした攻撃で、一時はドリアンに対し優勢に立ち回っていた末堂だったが、ドリアンは突如背を向けてその場から逃げ出してしまう。
その背を追いかけて食らいつく末堂だったが、なんとドリアンは末堂を“ジェットコースター”へと誘導し、その上で第2ラウンドを開始してしまった。超高速で動き回るジェットコースター。二人は安全ベルトすらつけない生身の状態で、立ったままバトルを始めてしまう。
当然、まともに立っていられるわけもなく、末堂は一方的にドリアンの攻撃を受け続けるという展開が続いていくのだが、戦いのなかで師・愚地独歩の教えを思い出した末堂は、空手の構え・“三戦”によってこの不安定を克服し、反撃へと転じることができた。
普段、我々も遊園地で乗る機会があるジェットコースターだが、その速度や危険性を身をもって知っているだけに、その上に立って戦うということの恐怖が容易に想像できてしまう。戦う場としての意外性もさることながら、それに即座に適応してしまうキャラクターのポテンシャルにも驚かされるエピソードだ。
バトル漫画には数々の特殊なバトルステージが登場し、その奇抜さと意外性で戦いを盛り上げてくれる。一癖も二癖もあるステージに登場人物たちがどのように対処していくかも、大きな見どころの一つだろう。