1976年から2016年まで40年もの間、『週刊少年ジャンプ』読者に愛された秋本治氏の漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。頭を空っぽにして笑えるギャグからほっこり話まで、同誌を手にしたことがある読者なら、両さんたちの名シーンがいくつか思い出せるはず。
当時の流行や話題を元ネタにすることも多い同作だが、それを発展させて描かれる“斬新なアイデア”の中には、現代になって「現実のものになった」ものもあり、改めて読むと驚かされる。そういったアイデアの登場は一度や二度ではなく、SNSなどでたびたび「予言書」と異名が付けられるほどだ。
■60万を投入して猛特訓!プロゲーマー
たとえば、現代ではeスポーツになっているが、同作の主人公・両津勘吉は1981年の時点でプロゲーマーが活躍する未来を予見していた。描かれたのは「アンコール雪之城の巻」だ。
両さんはある日、ボーナス60万をつぎ込んで『ドンキーコング』のアーケードゲーム機(新品)を購入し、13時間ぶっ通しで100万点を目指して特訓をしていた。「わしはTⅤゲームのプロになるんだ!」と豪語する両さんに「プロ…になってどうするんですか?」と困惑する中川。
ファミリーコンピュータの発売が1983年であり、掲載時にはまだ家庭用ゲーム機も普及していない。1972年には海外で『スペースウォー!』の大会も行われているが、日本ではまだそこまで一般的ではない。ゆえに中川のリアクションは、当時からすれば至極普通のことであろう。
そんな時代に両さんは「21世紀はすべてがコンピューターだ」「将棋とか囲碁とか元は娯楽で今はプロもいるだろう」との理由で、先を読んでプロゲーマーを目指しだしたのだ。ただ、このゲーム機はその後、タバコを見ると激昂して銃を乱射する島雪之城によって壊された。
■よりコンパクトになって実現したコンピューター掃除機
一家に一台、あると便利なお掃除ロボット。アイロボットによる「ルンバ」が有名だが、初めて家庭用として発売されたのは2001年発売のエレクトロラックスによる「トリロバイト」である。しかし、なんと『こち亀』では1980年掲載の「発明の日!の巻」の中で、お掃除ロボットの原型とも言えるコンピューター掃除機が登場しているのだ。
ある日、派出所に宛先を間違えて不思議な家電や機械が大量に届く。両さんは勝手に貰ってしまおうとしていたが、持ち主の発明家・東京発明研究所所長が現れた。近所の洋館に引っ越してきたという彼の手伝いで両さんと中川が洋館に向かうと、中は埃だらけ。そこで所長が取り出したのが、コンピューター掃除機である。
自らゴミを求めて動き回り、満タンになると自分で袋に詰めて吐き出すという便利なこのアイテムは、まさにルンバと同じだ。これには両さんも珍しくニコニコだったが、残念ながらその後洋館に潜伏していた指名手配の男たちに壊されてしまった。