■永遠の相棒との別れに号泣『仮面ライダーW』仮面ライダーW・左翔太郎とフィリップ

 2009年から放送された『仮面ライダーW』は、コミカライズ版『風都探偵』(原作:石ノ森章太郎さん、脚本:三条陸さん、作画:佐藤まさきさん)が連載されるなど、今もファンの支持が厚い平成ライダーだ。

 架空の都市・風都で探偵業を営む左翔太郎とフィリップが、「2人で1人の仮面ライダー」仮面ライダーWとして戦う本作の感動回といえば、やはり2人が別れる第48話ではないだろうか。

 この世のあらゆる情報を記録する「地球の本棚」から生まれたデータ体であるフィリップは、あと1回変身すれば消滅する危機に瀕していた。相棒を死なせまいと、Wへの変身を拒絶する翔太郎。

 しかし、自分たちは人々のために戦う仮面ライダーなのだと決意を新たにし、ユートピア・ドーパントとの最後の戦いに臨み、勝利する。

 変身を解除すべくダブルドライバーに手をかける翔太郎。変身を解けばフィリップは消えてしまい「2人で1人の仮面ライダー」は終わる。一度は呑みこんだ現実なのに、翔太郎は我慢できずに泣いてしまう。フィリップは翔太郎を慰めるが、彼も消える瞬間に涙を隠すように俯くのだ。

 「さよなら」
 「おう」

 臆面もなく号泣する翔太郎と、笑顔で別れようとしたのに最後に涙をこぼしたフィリップ。2人のヒーローの男泣きに、多くの視聴者がもらい泣きをした伝説の回だ。

 次話の最終回でフィリップが復活したハッピーエンドも含め、平成仮面ライダー指折りのクライマックスといいたい。

 

 仮面ライダーのマスクには「涙ライン」と呼ばれる意匠が盛り込まれることが多い。戦う宿命を背負ったライダーたちの底知れぬ哀しさを表現するため、まるで泣いているように見えるデザインを盛り込むのが伝統だ。

 仮面の下で泣きながら、それでも戦い続ける。今回紹介したライダーたちもそんなヒーローであり、その生き様に私たちもまた涙を流すのだろう。

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