「他の人に譲りたくないっていうのはありますよね」
1983年に放送開始されたアニメ『魔法の天使クリィミーマミ』。令和に時代が変わっても、今なお愛され続けている名作だ。この作品で主人公のマミ/優役を演じたのが太田貴子さん。アイドルとしてデビューしてすぐ、本作で主演を務めた彼女は、マミというキャラや作品そのものに一体どんな想いを抱いてきたのか。
その愛情の深さやプロ意識の高さがひしひしと伝わってくるインタビューを、『魔法の天使 クリィミーマミ メモリアル グッドバイ・ワンスモア』(双葉社)より一部抜粋してお届けします。
■駆け出しのアイドルが声優としてキャラクターを演じたのがマミ
――テレビシリーズの放送ごとに、作品の人気が高まっていってるというのは、ご自身でもオンエア中に感じられていましたか?
太田 私は、こんなにマミちゃんが人気になると思ってなかったんですよ。でも、作品自体はすごく可愛らしいし、アフレコは毎回毎回楽しみでしたね。当時は、まだ高校生だったので、学校が終わってから収録スタジオに入ってお仕事するという時代で。場所は、今は無き新坂スタジオなんですけど、その当時はファンの方がたくさんいらっしゃっていて。差し入れをくださったり、サインをお願いされたりと、そういうアットホームな現場だったんです。本当にお仕事というより、すごく楽しみながらできたので、それが演技にも繋がったのかな。
――テレビシリーズ終了前に、OVAが制作されるという話はもちろんお聞きになられたと思うんですけれども、その時のお気持ちはいかがでしたか?
太田 「やっぱりマミちゃんは人気なんだな」って感じでしたね。いつも新しいお話をいただく時、私は別に難しく考えないし、いつも楽しみながらやってるんですよ。もう「のほほん」みたいな感じで(笑)。
――OVA制作によって、マミ/優というキャラクターとのお別れが先送りされたな、と感じたりされましたか?
太田 いいえ。もう、何か一体化していて。もう「マミちゃんは私なんだ」って感じで(笑)。図々しいですけど、そういうふうに思ってたんですよ。だから「マミちゃんの物語が終わる」ということは思ってないですね。
――キャラクターを演じてるという感覚ともちょっと違ってたということですね。
太田 声優さんが役を演じられるのでしたら、また感覚は違うでしょうけど、私の場合はアイドルっていうひとりの人間がたまたま声優としてキャラクターを演じたので、その声優の概念を覆しちゃったんじゃないかなって思っているんですよ。大伴俊夫くんを演じている水島裕さんは、私のことをあだ名で「おたこ」って呼んで下さるんですけど、水島さんは「おたこの演技は教科書にない演技」って、未だにそんなふうに表してくれてるんですよ。私の演技は、どこにもないオリジナルみたいな。
――「永遠のワンスモア」というOVAが制作されるという話をお聞きになられても、新しいものが作られるというよりは……。
太田 テレビシリーズの延長線上、ですね。内容は色々変わったのかもしれないですけど。私は台本渡されちゃうとスポッと役に入れるので(笑)。
――「永遠のワンスモア」の新作パートについて、制作過程で台本をいただいた時に、スタッフから何か説明みたいなものはありましたか?
太田 特にないですね。音響監督の藤山房延(現在は藤山房伸)さんが、いつも「貴子の場合はマンツーマンでやらないと分かってくれないから」って(苦笑)。未だにそうですよ。YouTubeで公開されたマミちゃんのダンス動画のアフレコの時にも、「俺行くから」って久しぶりに立ち合ってくれて、演技指導などをしていただいて……。「覚えてるか? 貴子」「当たり前じゃないですか」って(笑)。そんな感じでした。
――太田さんが久しぶりにマミちゃんの声を演じられてるのを聞いて、全く変わってなくて本当に驚きました。
太田 よかった……。本当にあの時は急にお話をいただいたので、あまり準備ができていなくて。でも、本当に楽しみながら、声を入れながらエクササイズしてるっていう感じになって。自分もハーハー言うような感じでした(笑)。
――続く完全新作のOVA「ロング・グッドバイ」は、テレビシリーズで描かれた物語から時間経過が感じられるストーリーが展開しますが、「少し成長した優を見せようかな」といった意識はお持ちだったのでしょうか。
太田 私も久しぶりに台本を渡された時は「大丈夫かな?」って。ちょっとブランクがあるから……って思ったんですけど。同じキャラクターが少し成長した物語なので、ちょっと工夫するぐらいで大丈夫かな? といった感じで(笑)。