近年のゲームを見ていると、息を呑むほど美しく、迫力ある映像美が印象的だ。これはもちろん、ハードが進化した歴史があるからだろう。我が家の子どもたちがそんな最近のゲームに夢中になる姿を見ていると、筆者が熱中したファミコン時代のグラフィックが記憶によみがえってくる。
ファミコン時代といえば、懐かしいドット絵の(良い意味で)チープな描写もあったものだが、なかには、あまりの美しさにスタートボタンを押せないほど見入ってしまったオープニングデモもあった。今回は、そんな美しいファミコンゲームのオープニングを振り返ってみたい。
■「これがSGだ!」“何かある”と思わせるBGMも素晴らしい名作『不如帰』
まずは、1988年8月にアイレムから発売された『不如帰』だ。当時、あまり知名度も高くなかったが、おそらく戦国時代を連想させるようなパッケージに惹かれて購入したように思う。
本作のオープニングで素晴らしいのは、“何かある”と思わせるようなBGMだろう。軽快な音楽とともに表示されるのは、赤い文字で描かれたタイトルのロゴ画面のみなのだ。
この手の演出の場合、その多くが「PUSH START BUTTON」と点滅表示され、コントローラーのスタートボタンを押すように促してくるものだ。しかし『不如帰』は一味違った。軽快なBGMに、ただロゴ画面のみがずっと表示されているだけなのだ。「え? 何かあるのか」と、子ども心に思ったことを覚えている。
しばらくそのままにしていると、ロゴが消えて真っ暗に。そして、一定のビートを刻む早いテンポのBGMに切り替わる。そして、城下町のような背景が炎上しているグラフィックが映し出され、その後、3人の騎馬兵が炎をバックに駆け抜けるシーンが入る。
そこから監督のスタッフロールが入り、またもやタイトルロゴ画面に。ただ、ロゴの下には「予告編」と表示がされている。ここからは軽快なテンポで、スタッフの紹介と戦国時代を連想させるアニメーション演出が始まるのだ。
武田信玄・上杉謙信・毛利元就とキャラ紹介があり、極めつけは「中世最大の天才 織田信長」の魔王のような風貌の信長が描かれる。こんなの、信長で始めたくなるに決まっているだろう。
そして有名な「これがSG(シミュレーションゲーム)だ!」という文言。これには興奮した。スタートボタンを押さずに、何度も見入ってしまったものだ。
■金田のバイクに憧れた! 迫力ある映像にワクワク感が止まらなかった『AKIRA』
1988年12月にタイトーから発売された『AKIRA』。1980年代に『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載された大友克洋氏による超名作漫画が原作で、ファミコン版は同年7月に公開されたアニメ映画に基づいている。
オープニングから東京が爆炎に包まれるド迫力のグラフィックで、その後、バイクにまたがっている金田正太郎の姿がなんともカッコ良い。それにしても、「Canon」や「CITIZEN」のステッカーまで再現しているのはさすがだった。
ひたすら金田のバイクが強調されたオープニングだったこともあり、映画のストーリーを理解できていなかった当時の筆者は、“金田=アキラ”と錯覚してしまったものだ。ゲームには「かねだ」としっかり明記されていたのだが、なんせすぐ死んでしまってクリアできずにいたので、頭に入らなかったのかもしれない……。
それはともかく、あの時代のファミコンで、オープニングからワクワク感を漂わせる映像美。今、見返しても、素晴らしいものである。