『ストーカー 逃げきれぬ愛』渡部篤郎の"怪演"、雛形あきこの出世作『ストーカー・誘う女』も…90年代後期の「ストーカー」ドラマが“怖すぎる名作”だったの画像
『ストーカー逃げきれぬ愛』VoL.3 VHS(株式会社バップ)

 男女間のトラブルなどが原因で起こる「ストーカー」被害。もともとこの言葉は、90年代後半にかけて新しい用語として広まった。現在はストーカー規制法もあり、昔に比べるとやや被害は減っている印象もある。

 しかしこの言葉が誕生した当初は違った。現在のような法規制もなかったため、ストーカーによる恐ろしい被害があとを絶たなかったのである。

 当時は、そんな恐怖を描いた話題のドラマも登場していた。今回はそんなストーカーをテーマとした、90年代のヒットドラマ2作品を紹介したい。

■渡部篤郎さんの熱演がスゴかった『ストーカー 逃げきれぬ愛』

 『ストーカー 逃げきれぬ愛』は、1997年1月より日本テレビ系列で放送された月曜夜のドラマである。

 ストーカー被害に遭う主役・岸本海を演じたのは高岡早紀さん。海につきまとうストーカー・三枝辰也を演じたのは渡部篤郎さんだ。渡部さんはこのドラマが出世作となり、以降90年代を代表する個性派俳優として活躍している。

 あらすじはこうだ。海は神田正輝さん演じる既婚者・田所雅彦という男と付き合っていたが、クリスマスイブの日は一緒に過ごせなかった。田所から花束をもらった海だが、妻にはもっと大きな花束を買っていることを知る。

 寂しく街を歩いていた矢先、地面に落ちたクリスマスローズを必死に拾う辰也に出会う。海は親切心から辰也に田所からもらった花束をわたす。しかしこれがきっかけで辰也は海に執着し、恐ろしいストーカー行為を展開するのである。

 辰也が行うストーカー行為は常軌を逸している。無言電話をかけるのはもちろん、海の出したゴミを漁って個人情報を抜き取ったり、海の自宅に盗聴器をしかけて彼女の生活を監視したりもしている。

 またそれに伴う渡部さんの怪演も恐ろしい。一見するとイケメンである辰也だが、海の情報を手にするシーンではギラついた目を見せており、異様な雰囲気を醸し出していた。彼女が困れば困るほど笑顔になり、相手の迷惑も考えずに行動するシーンはまさにストーカーそのものだ。

 ちなみにストーカー規制法ができたのは2000年であり、このドラマが放送された3年後である。規制法がなかった当時はドラマのような嫌がらせを受けても、警察は「民事不介入」として対応してくれないケースが多かったという。

 本ドラマはそのような現状も取り入れ、被害者が精神的に追い込まれている様子も丁寧に描かれている。ストーカーについて認知度がそこまで高くなかった当時、世間にストーカーの恐ろしさを知らしめる役割を担ったといっても過言ではないだろう。

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