■モトラッド艦隊を止めるため特攻するも……!?
最後に紹介するのは『機動戦士Vガンダム』の第31話「モトラッド発進」で描かれた、シュラク隊隊長のオリファー・イノエによる特攻シーンだ。このときのオリファーの判断は、ガンダムファンの間でさまざまな波紋を呼ぶことになった。
タイヤつきの戦艦やモビルスーツで、地上のあらゆるものを踏み潰して進軍する「地球クリーン作戦」というザンスカール帝国の作戦を阻止するため、主人公のウッソ・エヴィンをはじめ、リガ・ミリティアは「モトラッド艦隊」に攻撃をしかける。
しかし、敵旗艦「アドラステア」の防御は固く、至近距離からV2ガンダムのビーム・ライフルを放っても有効打が与えられない状況だった。そんななか、オリファーはV2ガンダムのコア・ファイターでアドラステアの前輪部分に向かって突撃。機体ごと激突してアドラステアの前輪を損傷させることに成功したが、オリファーは戦死した。
まさに決死の攻撃だったが、結局アドラステアはすぐに修理され、たいした時間稼ぎにもならなかった。
一方リガ・ミリティアは、貴重なV2ガンダムのコア・ファイターと、シュラク隊の隊長の両方を同時に喪失。V2のコア・ファイターは「ミノフスキー・ドライブ」や「新型ジェネレーター」といった最新技術の塊であり、それに加えてオリファーという指揮官まで失ったとなると、とても「割に合わない」だろう。リガ・ミリティアとザンスカールの、どちらが痛手を負ったかは明白だった。
オリファーが特攻を決意するまでの時間があまりにも早く、元からその手段を想定していたのなら、量産機のVガンダムをぶつけて、パイロットだけ脱出するという方法もとれたかもしれない。
だが、モトラッド艦隊を地球に行かせてはならないというオリファーの想いが強すぎたがゆえに、あのような悲劇を生む判断をとってしまったのだろう。
このようにガンダムの世界では、命がかかった重大な判断を迫られるシーンは数多く登場する。その正否は結果から判断するしかないが、たとえ取り返しのつかない悲劇につながったにせよ、創作物である以上は「判断ミス」のひと言で断じたくない場面もあるのではないだろうか。